★フィリピン・ドゥテルテ大統領、中国に【敗北宣言】

 

国際政治―恐怖と希望 (中公新書 (108))

国際政治―恐怖と希望 (中公新書 (108))

 

全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。


フィリピンの暴れん坊ドゥテルテ大統領が、中国に【敗北宣言】
しました。


南シナ海問題、「中国を止められない」ドゥテルテ比大統領

AFP=時事 3/19(日) 21:43配信

【AFP=時事】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo
Duterte)大統領は19日、中国はあまりに強大であり、フィリ
ピンや中国が領有権を争う南シナ海(South China Sea)のスカ
ボロー礁(Scarborough Shoal)で中国が進めている構造物建設
を止めることはできないと述べた。>

 

どうしてこういう発言になったのでしょうか?

 

<2012年から中国が実効支配するスカボロー礁に関しては、西沙諸
島(英語名:パラセル諸島、Paracel Islands)の永興(Yongxing)
島(英語名:ウッディー島、Woody Island)に中国が設立した三沙
(Sansha)市の市長が、環境モニタリング基地を建設すると語った
と伝えられている。>(同上)

 

三沙市というのは、2012年にできた新しい「市」です。

その市長が、「環境モニタリング基地を建設する」と語った。

記者会見でこの発言について質問されたドゥテルテさんは、こう
いいました。


「われわれは中国を止めることはできない」

「私にどうしろというのか。

中国に宣戦布告をしろとでも。

それはできない。

(中国と交戦すれば)わが国は明日にも全ての軍隊と警察を失い、
破壊された国となるだろう」


事実上の【敗北宣言】です。

このフィリピン・中国対立の「最重要問題点」はなんでしょうか?

仲裁裁判所は昨年7月、「中国の主張は不当。フィリピンの主張は
正当」と判決をくだした。

中国は、この判決を無視して、悪行をつづけている。

わけがわからない人もいると思いますので、去年何が起こったか
を振り返ってみましょう。

 

▼なぜフィリピンは、仲裁裁判所に提訴したのか?

 

複雑な話ですので、基本を抑えておきましょう。

ロイター2016年7月12日付が詳しいです。

まず背景として、資源が豊富で、重要な航路である南シナ海
は、多くの領有権問題が存在しています。

 

<重要な国際海上交通路にまたがる南沙(英語名スプラトリー)諸
島を中心に、南シナ海は長い間、緊張状態にあり、近年はその度合
いが一段と高まっている。

中国、台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイが、スプラトリー諸
島とその周辺海域、あるいは周辺海域の領有権を主張している。

中国、台湾、ベトナムは、南シナ海北方の西沙(同パラセル)諸島
を自国の領土だと主張している。>

(ロイター2016年7月12日付)


「近年になって緊張状態が高まっている」といいますが、その唯一
の理由は、

中国です。

中国は、南シナ海のいわゆる「九段線」を主張しています。

九段線は、もともと中国共産党の前に中国を支配していた中国
国民党が1947年、「11段線」として発表したものがもとになっ
ています。

(国民党は、共産党との戦いに敗れ、台湾に逃げた。)

しかし、当時の中国は、自国の統一すらされていない状態。

もちろん、南シナ海も支配していなかった。

要するに、この「11段線」というのは、法的根拠に基づくわけ
ではなく、

将来「支配できたらいいなあ」という「夢」や「願望」の類だ
った。

世界的戦略家ルトワックさんは、この「11段線」について、


「酒を飲んで酔っ払った勢いでこのようなものをでっち上げた」


と断言しています。 (「中国4.0」37p)

1953年、既に国民党を打ち破り、中華人民共和国を建国してい
共産党は、

国民党の11段線から二つ抜いて「九段線」としました。

これも、たんなる「願望」であって、なんら法的根拠があるわ
けではありません。


日本の尖閣同様、中国が弱いうちは、あまり問題になりません
でした。

しかし、中国は2010年に世界2位の経済大国になり、自国の利
益を遠慮なく主張するようになった。

南シナ海の他の国々は、中国と比べれば皆小国。

かなうわけがない。

そこでベトナムと共にもっとも中国の脅威を感じているフィリ
ピンは2013年、仲裁裁判所に提訴したのです。


<フィリピンは2013年、中国の主張が国連海洋法条約(UNC
LOS)に違反し、同条約で認められた200カイリの排他的経済
水域(EEZ)に含まれる南シナ海で開発を行う自国の権利が制限
されているとして、仲裁裁判所に提訴した。>

(同上)


仲裁裁判所ってなんでしょう?


<1899年に設立された常設仲裁裁判所(PCA)は、最も歴史
ある国際司法機関。

PCAは、中国とフィリピンが署名するUNCLOSのような国際
条約の下で紛争を解決することがしばしば求められる。>

(同上)


では、国連海洋法条約(UNCLOS)とはなんでしょうか?


<<UNCLOSは主権に関する問題は扱わないが、海上における
行動のみならず、さまざまな地理的特徴から国が主張できることを
規定している。

同条約は島嶼(しょ)や岩礁から12カイリを領海とし、ヒトが持
続して居住可能な島から200カイリをEEZと定めている。

EEZは主権のある領海ではないが、同水域内において漁業や、石
油、ガスなどの海底資源を採取する権利は与えられる。>

中国とフィリピンを含む167カ国がUNCLOSに署名している。
>>

(同上)


最後の部分。

中国はUNCLOSに加盟しているのですね。

とても重要です。

 

▼どんな判断が下された?

 

フィリピンの訴えは、どのようなものだったのでしょうか?


< フィリピンによる提訴は、自国がEEZを利用する権利を明ら
かにしようとする約15の項目から成る。

中国によるスプラトリー諸島の7つの岩礁における埋め立てや人
工島の造成だけでなく、漁業や浚渫(しゅんせつ)、当局による
監視などの活動に対しても異議を申し立てている。

また、黄岩島(同スカボロー礁)を中国が実効支配していること
に対しても異議申し立てを行っており、スカボロー礁が完全にフ
ィリピンのEEZ内であるとする判断を求めている。

南シナ海の大半に主権が及ぶとの主張において、中国が基準とし
ている「九段線」の合法性をめぐる裁定は、どのような内容であ
れ、注視されるだろう。

九段線は他の国々のEEZに交わっており、東南アジア海域の中
心部にまで深く入り込んでいる。>

(同上)


では、仲裁裁判所は、どんな判断を下したのでしょうか?

CNN.co.jp2016年7月13日付から。


<中国は、海南島の南方から東方にかけて、南シナ海の9割を囲い
込む「九段線」という境界線を設定し、資源採掘や人工島造成を行
う権利の根拠としている。仲裁裁はこの権利を認めない立場を示し
た。

仲裁裁はまた、中国が人工島から200カイリまでを排他的経済水
域(EEZ)としてきた主張に対し、人工島はEEZ設定の根拠に
はならないと判断した。

さらに、中国は人工島周辺で自然環境を破壊しているとの見方を示
した。>

 

中国の主張する、いわゆる「九段線」は、はっきりと否定された形
です。

 

▼激怒する中国

 

このように仲裁裁判所は、明確に中国の主張は「違法だ!」と判断
しました。

仲裁裁判所の判断には、「拘束力がある」とされていますが、従わ

なかった時に制裁したり、執行させる仕組みがありません。

つまり、中国が従わなくても実質何も起こらない。

実際、中国は「従わない!」と宣言しています。

 

<仲裁判断、中国外交に大打撃 習主席「一切受け入れない」

AFP=時事 7月13日(水)10時7分配信

【AFP=時事】オランダ・ハーグ(Hague)にある常設仲裁裁判所
(PCA)が南シナ海(South China Sea)をめぐる中国の主張には
法的根拠がないとの判断を示したことについて、中国の習近平
(Xi Jinping)国家主席は、一帯の島々は古来より中国の領土だ
として、政府は今回の判断に基づくいかなる行動も受け入れない
と述べた。

国営の新華社(Xinhua)通信が伝えた。>


<フィリピンの訴えを受けた裁判で仲裁裁が12日に下した判断は
、天然資源も豊富な南シナ海の支配に野心を燃やす中国にとって
外交的な大打撃となった。

中国政府は真っ向から拒絶しており、中国外務省は同日のうちに
「判断は無効で何の拘束力もない」との声明を出した。

 新華社によると、中国の在オランダ大使は「きょうはハーグに
とって『ブラックチューズデー(黒い火曜日)』になったと批判。

判断は「国際法を辱めた」とこき下ろした。>

 

判断は「国際法を辱めた」そうです。

「悪いのは中国ではなく、仲裁裁判所だ」と。

 

▼ほとんど問題視されていない、中国の行動

 

このように、中国は、仲裁裁判所の判決を完全無視して、南シナ海
の実効支配拡大に動いている。

国際法を堂々と破り、平気な顔をしている。


さらに問題なのは、国際社会で、中国の行動が現在、ほとんど問題
視されていないこと。

実際、「史上最弱の大統領」と揶揄されたオバマ時代の方がまだマ
シでした。

なぜ中国は、非難されないのでしょうか?


理由は、国際社会の「悪役」が現在、トランプとプーチンだからで
す。

トランプは、「孤立主義」で「ナショナリスト」で「保護主義者」
である。

それで、(ダボス会議に集まるような)グローバリストの世界エ
リートに嫌われている。


そして、トランプープーチンの「ナショナリスト同盟」ができる
と困るので、せっせと「プーチン悪魔化」を推進している。


では、中国は?

習近平は今年1月、ダボス会議で、「グローバル化絶対支持宣言」
をしました。

彼は、賢明にも「チャイナ・ファースト」(=中国の夢)という
主張をひっこめた。

それで世界のエリート達は、「習近平は、トランプよりもマシ」
と考えるようになった。


ちなみに安倍総理は、欧州を訪問し、「日本は自由貿易を守る
チャンピョンでありたい!」と宣言しました。

これは、安倍総理が「世界で起こっていることをよく理解されてい
る」ということです。

習近平が、「グローバリズム絶対支持宣言」をしたので、

安倍総理は、「自由主義を守るチャンピョンでありたい!」といっ
た。

つまり、「グローバリスト」である世界のエリート達を懐柔した。


というわけで、現状、トランプとプーチンは、厳しい状態になって
います。

習近平は、グローバリストと和解した。

トランプの娘イヴァンカファミリーを懐柔し、トランプ自身を軟化
させることに成功した。


日本は?

安倍総理は、森友学園問題で追いつめられています。

それでも、現状日本は、悪くない位置につけています。

「悪くない位置」にいるのはほとんど安倍総理の功績です。