「雇用の問題 前編」From 三橋貴明@ブログ

 アメリカの次期大統領ドナルド・トランプ

記者会見し、「最も多くの雇用を作り出す
大統領になる」と宣言しました。

『移転企業に「高い国境税」 
トランプ氏が当選後初会見
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN12H0D_S7A110C1000000/

 トランプ次期米大統領は11日、当選後初めて
記者会見を開き「最も多くの雇用を作り出す
大統領になる」と抱負を述べた。米国外に
工場を作る企業には「高い国境税をかける」
とけん制し、製薬業界など産業界に米国で
生産するよう呼びかけた。米大統領選への
サイバー攻撃については「ロシアが関与した」
と認める一方、「他の国も攻撃した」と指摘した。

 トランプ氏は会見の冒頭「過去数週間、
いくつかの良いニュースがあった」と切り出し、
自動車大手のフォード・モーターフィアット
クライスラー・オートモービルズ(FCA)が
米国での生産増強を決めたことに感謝した。

 その上で「製薬会社は米国に薬を供給しているが、
ほとんど生産していない」などと述べ、批判の矛先を
製薬業界に向けた。米国内の雇用を増やすため
「(米国を)去り、好き放題やっている企業には
高い国境税をかける」と改めてけん制した。

 北米自由貿易協定(NAFTA)などを念頭に
「米国の通商協定は完全な失敗だ」と批判し、
「中国や日本、メキシコなどと貿易不均衡に
陥っている」と指摘した。(後略)』

 国民は生産者として働き、モノやサービスを生産。
顧客に消費・投資として支出してもらい、所得を稼ぐ。
生産者は稼いだ所得を持ち、今度は顧客側に回り、
別の生産者が生産したモノやサービスに、消費・投資
として支出する。すると、別の生産者に所得が生まれる。

 上記、所得創出のプロセスが回り続けるのが
実体経済」になります。すなわち、
実体経済とは「雇用」そのものと言えるのです。

 企業が外国に直接投資を実施し、
安いコストで生産を実現。利益を稼いだとしても、
生まれているのは「外国の雇用」です。

 あるいは、国内で生産できるものを、わざわざ
外国から輸入した場合、生産者はやはり外国人に
なります。本来、その製品の需要に対し、国内で
生産が行われれば、国民の雇用になるはずなの
ですが、輸入ではなりません。

 特に問題なのが、「対外直接投資+輸入」の
組み合わせ、いわゆる「逆輸入問題」です。例えば、
アメリカがメキシコから自動車を逆輸入した場合、

「国民の雇用が生まれない」
「需要が奪われている(アメリカの需要に対し、
 メキシコの生産者が供給している)」
 と、二重の意味で国民経済(実体経済)は
ダメージを受けてしまいます。

 無論、経済が適切なインフレ率の下で
成長を続け、国内が完全雇用状態に
なっているならば話は別です。

 完全雇用でありながら、それでも需要の方が旺盛だ。
 となれば、企業が外国に工場を建設し、製品を
逆輸入することは「国民経済的」にも正当化されます。
とはいえ、現実は違います。

 企業の「対外直接投資+輸入」拡大は、単に
「利益最大化」のために行われているにすぎません。
そして、なぜ企業が利益最大化を目指すのかといえば、
もちろんグローバル株主資本主義が蔓延してしまったためです。

 上記話のポイントは、主に二つあります。

【インフレギャップとデフレギャップ】

 一つ目は、経済においてインフレギャップが
継続しており、国内が完全雇用になっているならば、
「逆輸入問題」」は目立たないという点です。

 とはいえ、国内に「非自発的」失業者が存在し、
実質賃金が低迷している場合は、逆輸入問題は
「雇用の敵」とみなされることになります。

ちなみに、経済学は「非自発的」失業者を
認めていないからこそ、あれほどまでに
おバカ学問になってしまったのです。

 そして、二つ目。企業の経営に対し、
「その国の国民の豊かさ」と無関係な
グローバル株主が影響力を強めると、
「だって、そちらの方が利益になるじゃん」
 というシンプルな理由から、対外直接投資+
輸入拡大が進んでしまうという点です。だって、
そちらの方が(自分の)利益が大きくなるじゃないですか。

 アメリカは日本に先駆け、グローバリズム
基づく構造改革が進みました。結果的に、国民
(製造業の労働者など)が許容できないほどに
所得格差、資産格差が拡大し、「グローバル化疲れ」が
蔓延することになったわけですが、トランプが本気で
アメリカの製造業の雇用を増やしたいならば、
「逆方向の構造改革」が必要になります。

 例えば、「企業の株式に占める外資系の割合を
制限する」「短期の株式取引に税金をかける」
といった構造改革です。果たして、
そこまで踏み込めるのでしょうか。

 また、インフレギャップの逆、すなわち
デフレギャップは国民を貧困化させます。
すると、安い製品を求める「国内の消費者」
までもが、「逆輸入」を支持することになるわけです。

「だって、そちらの方が安く買えるじゃん」

 完全雇用が消滅した先進国でグローバリズム
構造改革が推進され、各国でグローバル化疲れが進行。
流れが反転し、イギリスのブレグジット、あるいは
トランプ大統領誕生に繋がったのが2016年という年でした。

 雇用の問題と言えば、特に深刻なのが若年層失業率です。
ヨーロッパ諸国はもちろん、アメリカ、中国、韓国、
台湾といった国々においても、若年層失業率は二桁が続いています。

 そんな中、ある国の雇用が明らかに「改善」しており、
若年層失業率に至っては5%前後と、世界が羨む水準になっています。

 もちろん我が国ですが、というわけで明日は
我が国の「雇用」についてみてみましょう。

 

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