最悪の事態を想定しておくことの重要性

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┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp
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├ 2017年01月09日 最悪の事態を想定しておくことの重要性(「The Fourth Turning」)
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おくやま です。

前回のつづきからです。

20年の季節が4つあり、それが80年周期で巡っており、
その前のサイクル(サエクルム)の「冬」をたどっていくと、
それぞれが第二次世界大戦明治維新にあたっている
ということまで説明しました。

今回はこのような説明をまとめて、
私が翻訳をした時に思いついたことを三つだけ、
ここで簡潔にまとめておきたいと思います。

まず一つ目が、自分と他の世代の違いに気づくことができて、
良い意味での諦めがつく、ということです。

ハウとストラウスのこの本は、
たしかにアメリカの未来予測のために書かれた歴史書、
ということが言えるとは思います。

ところが受取り方にもよると思いますが、
私にとっては自分たちの世代の「世界観」と、
他の世代との「世界観」の違いが
ここまで明確に示されているという点で、
逆に彼らたちに過剰な期待をせずに割り切ることができた、
という点が一番ありがたかったです。

私の世代は「遊牧民」ですから、どうしても上の世代と違って
社会的に厳しい中でサバイバルしなければならなかったわけですが、
そのような感覚は自分たちの親の世代は理解できませんし、
われわれも彼らのことは理解できません。

ところがそれを無理にわかってもらおうとするから
悲劇が起こるわけで、本書のように
なぜ違うのかという根本的な説明があれば、
自分なりに納得できるところが多いわけです。

もちろんわれわれの世代のことも
下の「英雄」や「芸術家」たちはわからないでしょうが、
それはそれでいいのです。
生きてきた時代や環境が違いますし、
それを無理にわかってもらわなくてもいいのです。
「わかってもらえなくていい」と理解できただけで、
余計なエネルギーを使わなくてよいというのは気が楽。
まさにこの本を訳した甲斐があった
というものではないでしょうか。

二つ目は、サプライズが必ず来ることを理解できるという点です。

詳しくは発売された後に
本書を読んでいただきたいのですが、
ハウとストラウスは過去のアメリカの時代変化に際して、
人々がいかに驚かされてきたのかを、
かなり詳しく調べて説明しております。

これらからわかるのは、やはり社会というのは
新しい世代が台頭してくると、おしなべて若い彼らの考えに戸惑う、
という点です。

自分たちと違う世界観を持った世代が台頭してくるわけですから、
理解できなくて当然なのですが・・・。

たとえば現在の「冬」の時代が厳しくなってくる時に
この本で想定されているのは、英雄世代の若者たちの台頭です。
そして現在のわれわれの感覚では、
現在のゆとり世代にはそれほど倫理観があるようには
見受けられないのかもしれません。

ところが彼らは(もしハウとストラウスの想定が正しければ)
「大戦争を兵士として戦う人々」なので、
たとえば私の世代の「遊牧民」よりも
はるかに道徳的な倫理観をもった、
それこそ何か熱いものを信じて一生懸命やるような、
「戦士」(warrior)として性質を潜在的に持っているということなのです。

もちろんそのようなことは、今の段階ではまったく表面化していません。

ところが何かのトリガー的な大イベントが起こったりすると、
その若者たちの心にスイッチが入り、
「英雄」としての役割を果たすようになるのかもしれません。

アメリカの場合はそれが金融危機であったり
トランプの当選だったりしたのかもしれませんが、
日本の場合は東日本大震災
そのトリガーだったと考えることもできるかもしれません。

最後の三つ目は、これが当たるかどうかはともかく、
ひとつのシナリオとして頭の片隅においておくのがいいのでは、
という点です。

実際にこの本の中では、97年の時点で書かれたにもかかわらず、
いかに「冬」の時代に備えて準備するかが
こと細かに書かれておりまして、いまから振り返っても
「そんなの無理だろう」と感じるような提案がいくつかなされております。

ところが私はそのような準備を実際にすることが重要なのではなくて、
そのような「最悪の事態を想定しておくこと」の点に
この本の最大の効能があると考えております。

つまりここで示されているのは単なる一つのシナリオなだけで、
事態がこのように進まない可能性も全然ある、ということであり、
いざそのような事態が起こったとしても
「いよいよ来たか」と心の余裕を持てるという意味で、
パニックになって右往左往するよりははるかに良いと考えております。

いかがでしょうか?
いかんせん20年近くも前の本ですし、
日本でどこまで読まれるのかは本当に未知数なところはありますが、
知的刺激は十分にあると思います。
おそらく2月までには発売されると思います。ぜひご期待ください。

( おくやま )

Youtube無料動画】現在翻訳中の「The 4th Turning」という本について
地政学者・奥山真司の「アメリカ通信」
https://youtu.be/qmg9DxpDfuI

Youtube無料動画】春夏秋冬サイクルとの類推で
 未来を予測する書 「The Fourth Turning」
地政学者・奥山真司の「アメリカ通信」 特別版:未来予測編
https://youtu.be/M52aqICmxOA

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