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『修身教授録』が説く究極のポジティブ人生観

 

修身教授録 (致知選書)

修身教授録 (致知選書)

 

 

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名著探訪(2): 『修身教授録』が説く究極のポジティブ人生観

 SBIホールディング・北尾吉孝社長は25年もこの本を読み返しては自らの指針としてきた。
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■1.80年前の本がアマゾン総合1位!?

 6月28日(火)に放映されたテレビ東京の『ニュースモーニングサテライト』中の「リーダーの栞(しおり)」で、SBIホールディング社長の北尾吉孝氏が『修身教授録』を紹介した。放映直後、アマゾンでの総合売上げランキングで1位となり、また全国の書店でも売り切れが続出したという。

『修身教授録』とは哲学者・教育者の森信三が昭和12(1937)年から2年間にわたって大阪天王寺師範学校(現・大阪教育大学)で、小学校教師を目指す学生たちに教師としての生き方を説いた講義録である。その講義録が平成元(1989)年に出版され、すでに13万部を超えるロングセラーとなっている。[a]

 80年前の講義録がこれだけ売れ、しかも現在でもアマゾン総合1位となるという事は、やはりこの本に日本人の心の琴線に響くものがあるからだろう。

 北尾氏はケンブリッジ大学経済学部を卒業し、野村證券のニューヨークやロンドンの拠点で投資関連の仕事をしていた国際経験豊かな実業家である。同時に幼少期から『論語』などの漢籍に親しみ、高校・大学時代には昭和の漢学者・安岡正篤著作に学び、近年は『何のために働くのか』などの書籍を出版している。現代日本を代表する哲人実業家の一人と言えよう。[b]


■2.「先生の魂がこの本を通じて僕の魂を揺り動かしている」

 その北尾氏が『修身教授録』に出会ったのは40歳頃、トップを目指すには知識以外の何かが必要だと感じていたという。北尾氏は25年に渡ってこの本を何度も読み返し、今は無数の付箋紙を挟んで分厚くなった本を示しながら、こう語る。

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 森先生が42、3歳で、これをお書きになられたんですね。僕が読んだのは、ちょうど40歳くらい。その日は、夜、寝られなかった。何か先生の魂がこの本を通じて僕に伝わってきて、僕の魂を揺り動かしているような、そんな感動を覚えたのですね。[1]
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 そして、この本を薦める理由をこう語る。

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 能力的に優秀な人とか、知識を豊富に持っている人はたくさんいるのです。だけど人物がいまいちかな、という人が多い。学校の成績だけ良い点をとれたら親は誉める、人に親切にするとか、正直にするとかという事で褒めない。これは昔とは全然違うと思うのですね。そういう所を補う教育が絶対必要で、だから僕はこの本を是非、薦めたい。[1]
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■3.ホリエモン敵対的買収からニッポン放送を守る

「能力的に優秀な人、知識を豊富に持っている人」だが、「人物がいまいち」という好例がホリエモンこと堀江貴文氏だろう。堀江氏は東大を中退し、若くしてソフト会社ライブドア」を成功させた。

 著書『稼ぐが勝ち』では、「人の心はお金で買える」「人間を動かすのは金」「金を持っているやつが偉い」などと公言して憚らなかった。

 その堀江氏が平成15(2003)年にラジオ局ニッポン放送敵対的買収をしかけた。堀江氏の姿勢に反発したニッポン放送の社員一同は総会を開いて、「ライブドアの経営参画に反対する」という声明を発表した。その中で堀江貴文社長にはリスナーに対する愛情が感じられず、資本構造を利用したいだけとしかみえない、と批判した。

 北尾氏は、堀江氏のアプローチを「相手の立場を無視するような敵対的買収や、資本市場を投機の場にしかねないような大規模な株式分割など、良識や倫理観がない」と批判して、ニッポン放送を支援し、堀江氏の企(たくら)みを打ち破った。

 能力や知識だけで「人物がいまいち」な経営者がはびこれば、世の中は弱肉強食のジャングル社会になってしまう。それを防ぐためには、人間教育が不可欠だ、というのが、この本を薦める北尾氏の考えだろう。


■4.「最善観」

 北尾氏が『修身教授録』と出会った数年後、ソフトバンク孫正義氏からスカウトを受けた。ちょうど、野村證券で大不祥事が起こり、進むべき道を考えていた時だった。

 証券界のトップ企業・野村證券から、当時はまだ海のものとも山のものとも分からないインターネット金融の世界に飛び込むのは、相当な冒険だったに違いない。どうすればよいか迷う中、決め手となった言葉が『修身教授録』の説く「最善観」だった。

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 最善観というのは要するに何かと言うと、「我が身にふりかかる一切の事、それは自分にとって絶対必然であり、また実に絶対最善である」という言葉がある。これを最善観という。こういうふうに思うと、気が楽になって、新しい挑戦ができるのです。

 だから、この言葉は森先生から受けた言葉の中ではずっと心に残り、その後の事業を経営していくうえでも大事な言葉になったのですね。[1]
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 大不祥事の起きた時に、ソフトバンクから誘いがかかった。これを自分にとって「絶対最善」と信じて、資本を受けてソフトバンクファイナンスという会社を設立した。

 インターネットの世界で、新たに金融事業を開いて行くには、実に様々な困難があったはずだが、北尾氏はその一つ一つが天の与えた「絶対最善」の配慮だと受けとめる事で乗り越えていったのだろう。

 事業は順調に成長し、やがてソフトバンクとの資本関係を清算し、SBIホールディングスとして独立した。現在はSBIグループとして、様々な金融サービス以外に、SBI大学院大学での人材育成や公益財団法人SBI子供希望財団による社会福祉事業まで広げている。野村證券からの独立は、やはり「絶対最善」だったのである。


■5.「天の命に従って働く」

 この最善観の根底には「天命」の考え方がある。天命について、北尾氏は著書『何のために働くのか』で次のように述べている。

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 東洋思想では、仕事とは天命に従って働くことだと考えます。仕事という字を見てください。「仕」も「事」も「つかえる」と読みます。では誰に仕えるのかといえば、天につかえるのです。天につかえ、天の命に従って働くというのが、東洋に古来からある考え方です。[2, p24]
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 天命に従って働くことが仕事である以上、仕事の中で遭遇する困難は、すべて天が何らかの配慮を持って人間に与えたものである。天の意思は人間には計り知れないが、天が我々を育てて立派に天命を果たせるよう仕組んだものということになる。

 そういう覚悟で困難に向かえば、苦労も苦労ではなくなり、それを乗り越えた後は、人間的な成長ももたらされる。現代流に言えば、すべての困難は天の配慮であるとする究極のポジティブ人生観なのである。


■6.万人に与えられた「唯一独自の任務」

 森信三は、人間一人ひとりに個別に与えられた唯一無二の天命があると考えた。

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 たとえば諸君らが、近い将来において一学級の担任教師となった場合、諸君等の受け持つ学級は、諸君が受け持っている限り、天下何人もこれを受け持つことはできないのです。・・・

 もちろんこれは、道理としては田畑を耕す農夫も、また工場に働く職工もみな同様であります。すなわち万人いずれも唯一無二、何人にも任せられない唯一独自の任務に服しているわけですが、只(ただ)それに対する十分な自覚がないために、生涯をかけてその一道に徹し、もって国家社会のお役にたつほどの貢献がしがたいのです。

 たとえば今一人の農夫が、農業の道を通して真実に生きようと決心して、永年その研究を重ねていったならば、いつかは他の人々の参考になるような農事上の発見もできるでしょう。・・・

 そもそも人間界のことというものは、一人の人間が自己に与えられた職責に対して、真に深く徹していったならば、その足跡は必ずや全国各地の同じ道を歩んでいる幾多の人々の参考となり、その導きの光となるはずであります。[3, p58]
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 このように森信三は各人に、自分に与えられた「唯一独自の任務」は何なのか、を問うのである。

 そして、我々が天から与えられた「唯一独自の任務」を果たそうとすれば、自ずから自分を鍛え上げなければならない。

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 ・・・人が真に自分を鍛え上げるには、現在自分の当面している仕事に対して、その仕事の価値いかんを問わず、とにかく全力を挙げてこれにあたり、一気にこれを仕上げるという態度が必要です。そしてこの際肝要なことは、仕事のいかんは問題ではなくて、これに対する自分の態度いかんという点です。

 否、ある意味では、さほどの価値のないことでも、もしそれが自分の当然なすべき仕事であるならば、それに向かって全力を傾け切るということは、ある意味では価値ある仕事以上に意義があると言えましょう。[3, p469]
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■7.「経営トップが人を引きつける品性を備えているか」

 このように自分の仕事を天から与えられた「唯一独自の任務」と信じ、その過程で出会った困難はすべて天の配慮による「絶対最善」と見なし、その克服のために全力を挙げて取り組むという生き方に徹すれば、その成果はどうあれ、その人生は本人にとっても充実したものとなろう。

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・・・われわれ人間にとって、人生の根本目標は、結局は人としての生をこの世にうけたことの真の意義を自覚して、これを実現する以外にないと考えるからです。そしてお互いに、真に生き甲斐があり生まれ甲斐がある日々を送ること以外にはないと思うからです。[1,p17]
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 こういう天命に従う生き方を追求している人は、自ずから「気品」が内面から輝き出てくる。気品について、北尾氏は言う。

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 ピーター・ドラッカーが言っているけど、経営者がどうしても身につけなければいけないのは、気品だと言っている。森先生も気品のことを言っている。品性だと。品性というものが経営者にはどうしても必要なのです。

 だから最終的に僕が投資するかしないかは、経営トップが人を引きつけるのに十分な品性を備えているか、人間的魅力なんです。一人で事業はできないから、いろいろな優秀な人が集まってくれて、一緒になって志を共有して、事業を興していく。金儲けのために、自分の自己満足のために一生懸命事業をやっているのかな、という所には、僕は投資をしたくない。[1]
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 自分の事業を天命だと信じて、全身全霊をもってそれに邁進する経営者と、自己の金儲けのために事業をしている経営者と、どちらに人はついて行くかは明白である。

 金儲けのためにニッポン放送の支配を企んだホリエモンに、社員一同が総会を開いて反対の決議を突きつけたのが、その好例だ。もし、ホリエモンニッポン放送を買収できたとしても、リスナーのために働く人は去り、給料だけが目当ての人ばかりになる。そんな企業が成功するはずもない。

 逆に、自らの事業を天命だと信じて、邁進する経営者には、多くの社員も一生懸命ついていく。志を同じくする人々の一致協力は、事業成功の絶対必要条件である。

 こう考えれば、北尾氏が「経営トップが人を引きつけるのに十分な品性を備えているか」を投資するかしないかの判断基準にするというのは、きわめて合理的なのである。だからこそ、SBIホールディングの成功もあったのだろう。


■8.気品ある人、気品ある国

 森信三は、小学校教師を目指す学生たちに気品を持て、と教え、北尾氏は、経営者には気品が必要だと説く。気品ある教師に生徒はついていき、気品ある経営者には従業員がついていく。

 企業や学級に限らず、世の中のすべての職場も家庭も地域社会も、一人では営めない。人々がそれぞれ役割を分担して、力を合わせて、やっていかなければならない。

 自分に与えられた役割を自らの「唯一独自の任務」と受けとめ、「永年その研究を重ねていったならば」、自ずから「品位」が内から輝きだし、それが周囲の人を引きつけていくだろう。そういう生き方をしている人は自ら幸福な人生を歩むのみならず、周囲の人も幸福に導く。

 一国のうちに、気品ある国民が増えれば、気品ある国ができる。そういう気品ある国こそ、世界の国々も友好を結びたいと近寄ってこよう。

『修身教授録』は、そういう究極のポジティブ人生観を説いているのである。
(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(709) 「人生二度なし」 ~ 森信三『修身教授録』を読む
 人生の根本目標は真に生き甲斐がある日々を送ること以外にはない。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h23/jog709.html

b. JOG(489) 天命と天職 ~ 日本人の仕事観
 天命に仕え、天職を持つことが、「世の中で一番楽しく立派なこと」である。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h19/jog489.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 【リーダーの栞】SBIホールディングス・北尾吉孝社長、テレビ東京
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/nms/bookmark/post_113838

2.北尾吉孝『何のために働くのか』★★★、致知出版社、H19
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4884747739/japanontheg01-22/

3.森信三『修身教授録─現代に甦る人間学の要諦 』★★★★、致知出版社
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4884741722/japanontheg01-22/


■前号「歴史教科書読み比べ(番外編): 育鵬社『もう一度学ぶ日本史』を読む」に寄せられたおたより

■私たちは間違った歴史教育を受けてきた!(正雄さん)

 きょうの「歴史教科書読み比べ」(番外編)を読み、改めて私たちは中学校や高校で誤った歴史教育を受けてきたと思いました。育鵬社の『もう一度学ぶ日本史』をさっそく注文しました。もう一度勉強し直したいと痛切に思いました。私はもと教師なので子どもたちに誤った歴史を教えたことにもなります。教科書がいかに重要かがよく分かりました。

 退職してから、渡部昇一氏や中條高徳氏の著書を読み、教えられた歴史とはかなりちがっていることが分かりました。最近、読んだ本『敗戦秘話』(産経新聞出版)や石平氏の『漢民族こそ歴史の加害者である』(飛鳥新社)でその確信が高まりました。

 日本人はやはり事実を知る必要があります。歴史をゆがめてきた教科書などはある意味で大きな罪を犯していると考えます。21世紀を担う子どもたちには真実の歴史を教えるべきだと思います。

 伊勢氏の名著『日本人が知らない日本』もぜひ学校教育でも使うべきだと思います。私たちはマスコミに踊らされている気がします。おそらくかつての日本もそうだったと推測します。

 真実を見定める目をこれからの日本人は持つべきです。知らないことや、誤ったことが多すぎます。歴史を俯瞰して学ぶ努力をしたいと思います。子どもや孫にも伝えていきたいです。教え子やその子どもにももちろん教えていきます。ありがとうございました。

 明日、『もう一度学ぶ日本史』が届きます。じっくり学び直します。

■編集長・伊勢雅臣より

 嘘の歴史を教えて、子供たちの元気を無くすのは、ハラスメント(いやがらせ)の一種ですね。歴ハラ(歴史ハラスメント)とでも言いましょうか。

 読者からのご意見をお待ちします。
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