あなたを捕食するサイコパス――脳科学からみた「『女』というビジネス」【後編】 中野信子

2. 脳科学者 中野信子さん連載4


ドイツにあるアーヘン工科大学のSchneiderらの研究によれば、サイコパスは、

眼窩および内側前頭前皮質の2か所に機能的障害を持つ。眼窩前頭前皮質
「他者への共感」を、内側前頭前皮質は「良心」をそれぞれ司っている領域と
いわれる。

つまり、共感能力が低く、相手の痛みを感じることができない。そして、自分が
どんなに残虐な行動をしても、罪悪感を持つことができない。そんな脳を持って
いるということになる。

実際、サイコパスは他人に共感することが苦手だ。
実験では、電気ショックを受けている知人の姿を見せて、皮膚の電気伝導度を
測る。普通の人では発汗が増えて皮膚の電気伝導度は上がるのだが、
サイコパスでは上がらない。

さらに、サイコパスは不安を感じたり、深く後悔したりすることもできない。
不安や恐怖の感情が低下していることについても、行動遺伝学者のLykkenが
実験で確かめている。

ブザー音が5秒鳴った後、不快な電気刺激を与える、というデザインの実験
なのだが、これを行うと健常な人ではブザーが鳴っている間、皮膚の電気伝導
度が上がる。しかし、サイコパスではその反応が起こらない。
つまり、彼らは痛みに対する不安と恐怖を感じていない。

また、罰の刺激を回避させる学習課題を行わせても、サイコパスは成績が悪い。
罰を受けても、彼らの脳はそれを罰だと感じられないからだ。
つまり、極刑も、サイコパスにとってはまったく犯罪抑止の意味を持たない。

では、サイコパスは生まれつきこんな脳を持っているのだろうか?
それとも、後天的な教育によってサイコパス脳に育つのだろうか?
 
実は、サイコパスには遺伝的素因があることが示唆されている。
約3500組の双子に対する調査によれば、冷淡さ・情動の欠如について
有意に集団遺伝性が見られたという。

相手の痛みを感じず、罰を恐れず、呼吸をするように他者を利用する。
邪魔になればあっさり殺害する。

近くにいたら、と考えると何とも恐ろしい存在だが、アメリカの心理学者、
マーサ・スタウトによれば、サイコパスの存在する確率は、欧米で4%。
東アジアでは欧米よりの10分の1程度といわれる。25人に1人、あるいは250人に
1人というのはかなり高い比率といえるのではないだろうか。

今この瞬間も、あなたのまわりにいる誰かが、サイコパスとしてあなたを
食い尽くしてやろうと狙いを定めている可能性がある、そう考えてもまったく
おかしくない数字だ。

サイコパスの犯罪の多くは、
・他人から金銭を得る
・巧みに性的関係を持つ
・承認され、多くの人から尊敬される
ことを目的としている。健常人であればそれを、刑罰を受けない(まっとうな)
方法で達成しようとするが、サイコパスでは安直で、反社会的な行動で行おうとする。

IQが高くなるほど、サイコパスの反社会的行動は減っていくというデータがある。
これは、IQの高いサイコパスがいないということを示しているわけではない。
IQが高ければ、反社会的とみなされるかもしれないギリギリのラインで、
効果的に自分を演出しながら、利益を得ることが可能だからだ。

もしかしたら、殺してしまわない程度に生かされながら、あなたもいま、
知能の極めて高いサイコパスに搾取され続けているのかもしれない。

 

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