フレブル君日記

フレブルはゆるいよ

あなたを捕食するサイコパス 中野信子

2. 脳科学者 中野信子さん連載3

あなたを捕食するサイコパス
――脳科学からみた「『女』というビジネス」【前編】

中野信子

サイコパス(Psychopath)、という言葉を、目にしたことのない読者は
おそらくほとんどいないと思う。

テレビでコメンテーターをしていると、異様な殺人事件がしばしば取り上げ
られるのに遭遇する。容疑者または犯人として世間を騒がせた人物に対して
「この人の脳は一体、どうなっているのでしょうか・・・?」と聞かれる。
殺人という行為が身近にあってはならない、とする本質的な忌避感から、
犯人は自分たち健常者とは決定的に違うのだ、と強く願いたい気持ちが、
その質問には反映されているように思える。

ただ、決定的に違う要素がないでもない。その犯人たちは多くの場合、
サイコパス」の要件に当てはまると考えてよい。たとえば、話題になった
例では、男性連続不審死事件の木嶋佳苗被告、尼崎死体遺棄事件の角田美代子
被告などがサイコパスではないか?と評された。

近年では、夫や交際相手など複数の男性を青酸化合物で殺害したとして、
京都府警に殺人容疑で逮捕された、筧千佐子容疑者がそれに該当しそうだ。
結婚・交際と殺人を繰り返し、多額の資産を得てきたという。

報道各社の取材に対してこう答えていたというのが印象的だった。
「男が私に求めるのは料理と洗濯、そして夫婦生活」

ごく普通の内容だ。大して特別な何かをして男性を惑わせているわけではない、
というところに意識が向いた。筧千佐子容疑者は、容姿に特筆すべき何かがある
というようなこともなく、一見、意外なほど平凡な主婦に見えた。この普通の
主婦が、『女』を巧みに使って多くの男性を誘惑し、男が安心しきった頃合を
見計らって無情な犯罪を繰り返してきたというのだ。

つまり、男を食い物にしようとするステルス型の女がいる・・・
ということになるのだが、この事件を、みなさんはどう受け止めただろうか。

殺人にまで至らずとも、ATM扱いされる、などと自虐的に語る中高年の男性を
時折みかける。Googleで「夫」という語を検索すると「夫 殺したい」と
リコメンドが表示されたという話題が以前ネット界隈を賑わせたが、
こうした事件が、男性が結婚そのものを忌避するきっかけになることも
あるのかもしれない。

さてそれでは、サイコパスの正確な定義をご存じの人はどれほどいるだろうか。
異常な動機で凶行に及ぶ人?
冷酷な知能犯?
常人には想像もつかない異常性を持つ犯罪者?
こんな人かな、とふんわりしたイメージで把握している人が大多数かもしれない。

サイコパスの診断基準項目としては、PCL-Rという成人向けのチェックリストが
使われている。1970年代に開発され、91年に改訂版が公開された。
末尾の”-R“はrevised(改訂版)を表す。

さっそく、どんな項目があるのかをみてみよう。

1. 口がうまく、表面的には魅力的
2. 自己中心的でうぬぼれが強い
3. 嘘をつかずにはいられない
4. 人を操ろうとする
5. 後悔したり、罪悪感を感じたりしない
6. 感情が浅い
7. 冷淡で、人に共感しない
8. 自分の行動に責任を感じない
9. 退屈しやすく、刺激を求める
10. 寄生虫のように他人に依存する
11. 欲望を抑えるのが苦手
12. 性的に乱れている
13. 現実的な長期計画を立てて行動できない
14. 衝動的に行動する
15. ルールを頭では分かっているが、責任を取らない。義務を放棄する
16. 少年・少女時代から犯罪歴がある
17. 幼児期から問題行動が多い
18. 保護観察・執行猶予期間の再犯がある  
19. 短期間に結婚・離婚を繰り返している
20. 多様な犯罪歴がある
(項目は、英語版PCL-Rをわかりやすく書き直したものをこちらに紹介させていただいた)

これら診断基準20項目について、どの程度当てはまるかで、0点、1点、2点と
得点を算出し、その合計点で評価する。30点以上でサイコパス、20点以下で
サイコパスでない、とされる。

いかがだろうか?
生兵法は怪我の元、専門的な教育や訓練を受けた人向けのチェックリストを、
素人が自分や他人に適用するのは危険であり、慎重に扱わねばならないが、
サイコパスがどんなものなのか、理解するためにはいい材料となるだろう。

青酸化合物事件を念頭にリストを見返してみると、特に10番(寄生虫のように
他人に依存する)、19番(短期間に結婚、離婚を繰り返している)などは興味深い。

それでは、こうした特徴的な行動をするサイコパスたちの脳は、
普通の人たちとどこがどう違うのだろうか。

(後編につづく)

 

良心をもたない人たち―25人に1人という恐怖

良心をもたない人たち―25人に1人という恐怖

 

 

 

 

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