仕事ができる管理職ほど社長に向かない 宋 文洲

1. 論長論短 No.257

仕事ができる管理職ほど社長に向かない
宋 文洲

部長、副部長、次長、担当部長、部長代理、部長補佐に部長相当・・・
日本の古い会社には実に管理職が多くいます。5割以上の社員が管理職に
なっている企業は珍しくないのです。管理職会議の際、現場で仕事する社員が
いなくなるほどです。

言わなくても多くの新入社員の目標は主任、係長、課長、部長を経て
取締役を目指すことです。何歳になれば管理職のどのポストに立つかも
暗黙のルールになっています。そのため、年に相応しい管理職のポストに
なっていないと居心地が悪くなるのです。

管理職が多いと何が起きるか。それは管理職の社員化です。本来、優秀な
社員が優秀な管理職になる訳ではないのですが、皆が管理職を目指すので
優秀な社員から先に管理職にするしかありません。結局、管理職は一種の
社員への奨励になってしまうのです。

仕事ができる社員を管理職にする。仕事ができる管理職を役員にする。
そしてとうとう社長はそのような役員の中から選ぶことになります。
つまり社長も単なる優秀な社員や管理職なのです。

優秀な社員が管理職になり社長になった場合は悲劇が起きます。まずその
社長は社員や管理職の癖を持っているため、現場の細かいことに口を挟みます。
それぞれの社員が育つための環境作りやチーム全体のマネジメントの重要性を
知らない上、ノウハウもないのです。

次に、優秀な管理職が社長になった場合、現在の管理職はチャレンジしなく
なります。「あの伝説を作った先輩にとてもものが言えない」、「新しいことを
提案しても社長のセンスに合わないと怖い」、「先回りして反対されないことを
する」などの心理が働くのでついつい保守的な風土が定着してしまうのです。

ご存じのとおり、経営は変化への対応にすぎず、永遠の勝利法などは存在しません。
変化に対応するには現在の社員達に彼らに合う方法で現在の社会環境や顧客
ニーズに合う仕事をしてもらうしかありません。失敗したら励ましてあげる。
成功したら奨励をしてあげる。困難に遭ったら助けてあげる。こんな単純なことは
仕事ができる管理職の人達はとても苦手なのです。

なぜでしょうか。それは彼らが管理職として成功し、その結果(奨励)として
社長に選ばれたからです。社長になったことで余計に自分の管理職としての
成功を経営に活かせると思い込んでいるからです。この管理能力を強調しな
ければ社長としての合法性や納得性が弱くなるからです。

半分の社員が管理職になり、その中から社長を誕生させるにはこのような実績
主義は止むを得ません。同期や先輩がたくさんいる中、「なぜ彼を社長に選ぶ
のか」には実績が最も説得力があります。しかし、これは良い牛を競馬に
行かすようなもので、悲惨な結果を招くケースが多いのです。

二千年前、劉邦韓信が酒を飲みながら各自が何人の部下を統率できるかを
論じました。韓信が「私は多ければ多いほどよいが、あなたは十人だろう」との
話に劉邦が不快な表情を見せた。すると韓信が「あなたは将軍を卒いる。私は
兵隊を卒いる」と説明しました。結局、劉邦は仕事ができる韓信を使って仕事が
できる項羽に勝って天下を取りました。

伝説の営業部長、最盛期の工場長、ヒットメーカーのプロデューサー・・・
仕事ができる管理職ほど社長に向かないのは昔からの掟のようです。

 

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