フレブル君日記

フレブルはゆるいよ

塔婆

大白法・平成19年7月16日刊(第721号より転載)教学用語解説(116)
   
 塔婆とは

 塔婆とは、梵語の「ストゥーパ」の音写である卒(そ)塔(と)婆(ば)のことで、方(ほう)墳(ふん)・円(えん)塚(ちょう)・霊(れい)廟(びょう)・功(く)徳(どく)聚(じゅ)などと訳します。

 元来、仏・阿(あ)羅(ら)漢(かん)・帝王などの身骨、また遺(い)髪(はつ)・所持品などを納め、その上に土石や塼(せん)(瓦(かわら))を積んで土饅(まん)頭(じゅう)の形にしたもの、あるいは木材を組み合わせて造った築造物を指します。後に釈尊の聖(せい)跡(せき)を標示するための構築物(支(し)提(だい))を指すようにもなりました。

 中国へは三国時代に伝わり、楼(ろう)閣(かく)建築と結びついて重層塔が成立し、日本に伝わって木造の多宝塔・三重塔・五重塔や、石造の十三重塔などが建立されました。

 その後、日本では五輪形式の塔が一般的となり、木板・木柱・石板に刻み目をつけた墓標や供養塔が作られるようになりました。

 五輪の塔婆

 五輪の塔婆は、角や丸の形を積み重ねて一つの体を表すもので、下から方形(四角)・円形・三角形・半円形・如(にょ)意(い)宝(ほう)珠(じゅ)の順序で組み立てるのが基本的な形です。これは地水火風空の五大を表します。すなわち、方形は地輪、円形は水輪、三角形は火輪、半円形は風輪、如意宝珠は空輸です。一番下の地輪は地面を意味し、次の水は地面の上に溜(た)まるので地の上となり、火は水より高く空中に昇(のぼ)る性質があるので水輪の上、風は火よりも上に昇ることができるので火輪の上、空は最も上にあるので一番上に置かれます。

 この五大(五輪)は『総勘文抄』に、

「地水火風空(中略)是(これ)則(すなわ)ち妙法蓮華経の五字なり」(御書一四一八頁)

とあるように、妙法蓮華経の五字を現します。

 また、この五大は妙法蓮華経の仏の身体を表現したものであり、『御義口伝』に、

「我等が頭は妙なり、喉(のんど)は法なり、胸は蓮なり、胎(はら)は華なり、足は経なり。此の五尺の身は妙法蓮華経の五字なり」(同一七二八頁)

とあるように、我々の身体もまたこの妙法蓮華経の五字に配されるのです。

 塔婆建立の意義

 本宗の塔婆は、表に「妙法蓮華経」の題目を書き、その下に法華経『法師品第十』に説かれる、

「此(し)中(ちゅう)已(い)有(う)。如(にょ)来(らい)全(ぜん)身(しん)」(此(こ)の中には、已(すで)に如来の全身有(いま)す)」(法華経三二七頁)

という経文を書きます。これは塔婆が妙法蓮華経の仏の体であることを表します。そして、そこに故人の戒(かい)名(みょう)や名前を書き入れることによって、成仏の境界を現すのです。

 この『法師品』の文の直前には、法華経が存在するところには七(しっ)宝(ぽう)の塔を建立すべきこと、そしてその塔の中には仏(ぶっ)舎(しゃ)利(り)(釈尊の遺骨・砕(さい)身(しん)の舎利)を安置する必要はないことが説かれています。前掲の経文はその理由を明かしたところで、法華経の中にこそ如来の全身(法身の舎利)が存在することを示しています。

 塔婆を建てるのは、建立する人の信心と追善の願力とによって、亡くなった人の霊を妙法に照らされた仏身として現すもので、御本尊を通じて題目を供養するゆえに、その功力によって亡(ぼう)魂(こん)も、また回(え)向(こう)する人も大功徳を受けるのです。
 『草木成仏口決』に、

「我等衆生死する時塔婆を立て開眼供養するは、死の成仏にして草木成仏なり」(御書五二二頁)

とあるように、塔婆供養は自ら題目を唱えることのできない亡者や非情の草木を、御本尊の御威光と題目の力によって成仏させるものなのです。

 塔婆の功徳

 塔婆の功徳について、造塔延命功徳経には、あと七日の寿(じゅ)命(みょう)と告げられた波(は)斯(し)匿(のく)王(おう)が、釈尊から、童子が戯(たわむ)れに自分の背(せ)丈(たけ)ほどの土の塔を建てた功徳によって七年の寿命を得たという因縁話を聞いて発(ほっ)心(しん)し、多くの塔を建立して寿命を延ばしたことが説かれています。

 また、大聖人は『中興入道御消息』に、

「丈六のそ(卒)と(塔)ば(婆)をたてゝ、其の面(おもて)に南無妙法蓮華経の七字を顕(あら)はしてをはしませば、(中略)過去の父母も彼のそとばの功徳によりて、天の日月の如(ごと)く浄土をてら(照)し、孝養の人並びに妻子は現世には寿(いのち)を百二十年持ちて、後生には父母とともに霊(りょう)山(ぜん)浄土にまいり給はん」(同一四三四頁)

と仰(おお)せられ、塔婆の功徳によって過去の父母が成仏することはもちろん、建立主やその妻子も現世において寿命を長らえることを御教示です。

 『上野殿御返事』に、

「いまをも(思)ひい(出)でたる事あり。子を思ふ故にや、をや(親)つき(槻)の木の弓をもて、学文せざりし子にをし(教)へたり。然る間此の子うたて(無情)かりしは父、にくかりしはつきの木の弓。されども終には修学増進して自身得脱をきわめ、又人を利益する身となり、立ち還って見れば、つきの木をもて我をうちし故なり。此の子そ(卒)と(塔)ば(婆)に此の木をつくり、父の供養のためにた(建)て、て(手)む(向)けりと見へたり」(同一三六〇頁)

とあります。

 父母や先祖に対して真の孝養を尽くしたいのであれば、私たちはまず第一に御本尊を信じ、一生懸命に信心修行して功徳を積み、その功徳善根をもって亡くなった人に塔婆回向をすることが肝(かん)要(よう)です。

 本宗においては常(じょう)盆(ぼん)・常(じょう)彼(ひ)岸(がん)と言われます。毎日の生活の中に報恩の心、追善の気持ちを忘れることなく、正しい塔婆供養の意義を理解して、故人の成仏を祈念いたしましょう。