シリア軍事介入がもたらす中東大混乱(1/3)

┠──────────────────────────────────
┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp
┠──────────────────────────────────
├ 2013年11月11日 シリア軍事介入がもたらす中東大混乱(1/3)
┠──────────────────────────────────

※「月刊日本」10月号に掲載されたおくやまさんのインタビュー記事全文を
  3回に渡ってご紹介致します。この分析は9月上旬においてのものです。


■シリア攻撃は米国を泥沼に引きずり込む

── シリア情勢が緊迫している。現時点(9月6日)において、
アメリカがシリアを攻撃するかどうかは予断を許さない状況にあるが、
アメリカ国内ではシリア攻撃についてどのような見解があるか。

奥山

アメリカでは8月27日に、ウィリアム・クリストルなど、
いわゆるネオコンを中心とする対外政策の専門家74名が、
オバマ大統領にシリア攻撃を嘆願する手紙を書いたことが話題となった。
ネオコンは一時力を失っていたが、元々知的レベルの高い人たちで、
優れた著作も残している。彼らはここに来て、再び存在感を示しつつある。

この嘆願書では、「アメリカは、有志の同盟国やパートナーたちと一緒に
離隔攻撃兵器(ミサイル等)やエアパワーを使って、化学兵器を大規模に使用した
シリアの独裁者側の軍隊を攻撃すべきである」と述べられ、
その目標は「アサドの化学兵器をアメリカや同盟国、
それにシリアの人々にとって脅威ではない状態にすることだけでなく、
アサド政権のエアパワーと、その他の通常兵器が民間の非戦闘員へ使われることを抑止し、
もしくはそれらを破壊すること」と記されている。

これはオバマ大統領にとっても心強い援軍だ。
オバマ大統領は当初、シリア攻撃に消極的だったが、
自ら化学兵器の使用が「レッド・ライン」(最後の一線)だと表明してしまった以上、
引っ込みのつかない状況にあった。
また、アメリカ国内では、国民皆保険をはじめとする
財政問題をめぐって民主党と共和党が激しく対立しており、混乱状態にある。
そこでオバマ大統領としては、シリア問題で共和党のネオコン勢力と手を組むことで、
国内問題解決の梃子にしようという思惑もあるだろう。
とはいえ、このネオコンの主張にはかなり無理があると言わざるを得ない。
彼らはシリア攻撃の根拠として、シリアが大量破壊兵器を所持していることを挙げている。
これはイラク戦争においても同様だった。

しかし、それでは何故北朝鮮を攻撃しないのか。
北朝鮮は今や自他共に認める核保有国だ。
大量破壊兵器を所持していることが攻撃理由であるならば、
真っ先に北朝鮮を攻撃すべきだろう。

ネオコンの論理を突き詰めると、大量破壊兵器を所持している国は攻撃せず、
所持していない国は攻撃する、ということになる。彼らの主張は逆説的に、
大量破壊兵器にはそれだけ抑止力があるということを証明してしまっているのだ。
また、ネオコンの主張する「目標」も曖昧だ。化学兵器の破壊を目標とするならば、
化学兵器がどこに貯蔵されているかが重要となる。
しかし、アメリカはそのようなインテリジェンスを持っているだろうか。

あるいは、彼らは「首切り戦略」を目指しているのかもしれない。
この戦略は、たとえばナチスドイツであればヒトラーを殺せば戦争を終結させることができる、
というように、トップのリーダーだけを狙うものだ。
チェチェン紛争でもロシアはこの戦略をとった。
もっとも、専門家の間ではこの首切り戦略の効果について疑問視する声も多く、
結局は地上部隊を投入しなければならなくなるだろう。

しかし、シリアは中東ではイスラエル、エジプトに次ぐ軍事大国であり、
そう簡単に倒すことはできない。それゆえ、一旦戦争に突入すれば、
イラク戦争の時と同じようにズルズルと戦闘が長引いていき、
歯止めがきかなくなってしまうだろう。

── ネオコンの論理では、イランが核武装すれば
アメリカは攻撃しないということになる。それではイスラエルが黙っていない。

奥山

イスラエルではアメリカに対する不信感が高まっている。
現在、イスラエルパレスチナエルサレムで和平交渉を行っているが、
交渉の仲介役としてアメリカから派遣された
インディク中東和平特使はこの交渉に参加できていない。
イスラエル側が彼の出席を拒んでいるようだ。
このように、イスラエル右派はアメリカに見切りをつけ、
独自の行動をとりつつあるのだ。

(つづく)

自滅する中国

自滅する中国