★日本人の正義〜アンパンマン・やなせたかしさんは語った


全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。


アンパンマンの生みの親で知られる、やなせたかしさんが亡くなら
れました。

94歳。

最後まで働いておられた。

理想的な人生ですね。


今日は、やなせたかしさんが、「正義」について何を語っておられた
か、ご紹介します。


アンパンマンとの出会い


最初に、私とアンパンマンについて書きます。

アンパンマンの絵本が初めて出版されたのは1973年だそうです。


北野3歳。


正直、全然知りませんでした。


アンパンマンのアニメがはじまったのは1988年。


北野18歳。


高校3年生ですから、アンパンマンは見ませんでした。


その後私はモスクワに来たので、日本でアンパンマンが大ブレイク
しているのを目撃しませんでした。


そして、最近まで「名前ぐらい」しか知らなかったのです。


しかし、娘がうまれて状況が変わりました。


娘は、モスクワに暮らしているので、自然にロシア語ばかり話すよ
うになってしまいます。


私は、「このままでは日本語話せなくなる!」と危機感を持ち、「ア
ニメを見せて日本語に慣れさせよう!」と考えた。


でも、「進撃の巨人」を見せるわけにもいきませんから、もう少しお
だやかなのを・・・。


それで選んだのが、「ドラえもん」と「アンパンマン」だったのです。


娘は2歳8か月ですが、アンパンマンの主要キャラを全部知ってい
ます。

アンパンマンジャムおじさん、バタ子さん、チーズ、食パンマン、

カレーパンマンバイキンマンドキンちゃん、ホラーマン、赤ちゃ

んマン、メロンパンナ、などなど。


そして、日本人の子供の大部分がやるように、「アンパンチ」「ア
ンキック」をやっています。


私は、「ああ、これで日本語に慣れるだろう」とありがたく思って
いる。


そして、私自身もアンパンマンにはまってしまいました。


それで、やなせたかしさんが亡くなられたことを聞いて、とても悲し
かったのです。


▼絶対的正義とは?


やなせたかしさんは、1919年2月6日に生まれました。

出身は高知県


東京高等工芸学校図案科(現・千葉大学工学部デザイン科)卒業後
、製薬会社の宣伝部に入社。


1941年、22歳の時、中国に出兵しています。


戦争が終わり、世の中は一変してしまった。


「絶対善」だと信じてきた戦争は、「悪の侵略戦争」ということになった。


天皇陛下のために命をかけろ!」と叫んでいた政治家たちが、

突如「民主主義者」になり、アメリカの手下になった。




似たような状況、私も目撃しています。


ソ連人って、結構「明るい共産主義時代がくること」を信じてい
たのです。


大学の寮で私の同室だったセリョージャ君も、「ソ連が崩壊する
その日まで共産主義を信じていた」といってました。


それが、一夜明けると、「共産主義はインチキだ!」となった。


そして、共産党のトップ層は、突然「民主主義者」に転向した。


困るのは、一般人です。


いきなり今までの「絶対善」が「完全悪」に変わっちゃうのですから。


やなせたかしさんも、かなり悩まれたそうです。


「正義ってなんだろう?」と。


そして、たどりついた答えがこれでした。



<やなせ:「アンパンマン」を創作する際の僕の強い動機が、「正
義とはなにか」ということです。

正義とは実は簡単なことなのです。


困っている人を助けること。


ひもじい思いをしている人に、パンの一切れを差し出す行為を「正
義」と呼ぶのです。


なにも相手の国にミサイルを撃ち込んだり、国家を転覆させようと
大きなことを企てる必要はありません。

アメリカにはアメリカの“正義”があり、フセインにはフセインの“正
義”がある。

アラブにも、イスラエルにもお互いの“正義”がある。

つまりこれらの“正義”は立場によって変わる。

でも困っている人、飢えている人に食べ物を差し出す行為は、立
場が変わっても国が違っても「正しいこと」には変わりません。

絶対的な正義なのです。>

(NEWSポストセブン 2011年5月3日)



それで、アンパンマンは、お腹がすいている人や動物を見ると、

自分の顔(アンパン)を、とってあげるんですね。


初めてみたとき、結構ショックでした。


「え〜、自分の顔を食べさせるの???!!!」と。


そんな深い思いが込められていたとは、知りませんでした。


そして、やなせさんは、「正義をするのは、普通の人だ」とおっしゃ
います。



<正義って、普通の人が行うものなんです。

政治家みたいな偉い人や強い人だけが行うものではない。

普通の人が目の前で溺れる子どもを見て思わず助けるために河に飛
び込んでしまうような行為をいうのです。

ただし普通の人なので、助けに行って自分が代わりに溺れ死んでしま
うかも知れない。

それでも助けざるを得ない。

つまり、正義を行う人は自分が傷つくことも覚悟しなくてはいけない。>

(同上)




自分を犠牲にして、人を救うのが正義だと。


線路で倒れているお年寄りを救って、自分は犠牲になった

村田奈津恵さんのことを思い出しました。



やなせさんは、こんな例をあげておられます。



<今で喩えると、原発事故に防護服を着て立ち向かっている人々が
います。

自分たちが被爆する恐れがあるのに、事故をなんとかしなくてはと
いう想いで放射能が満ちた施設に向かっていく。

あれをもって、「正義」というのです。

怪獣を倒すスーパーヒーローではなく、怪獣との闘いで壊された街
を復元しようと立ちあがる普通の人々がヒーローであり、正義なの
です。>

(同上)



自分の命を顧みず、福島原発の事故処理作業にむかった人たち。

日本人のみならず、全世界の人が感動しました。


▼日本は復活するか?


私が住んでいるモスクワは、多民族都市です。


いろいろな民族の人たちが、「自分の利益、権利」を主張して、
日々奮闘しています。


そんなモスクワの人が、3.11後の日本人を見て、驚愕したので
す。


いろいろあるのですが、ロシア正教の神父さんは、


「食糧の配給所で、皆整然と行列に並んでいること。

『いくつですか?』と聞かれて、『一つです』『二つです』と、必要
最低限しかもらわないこと。

ロシアだったら、『俺に全部よこせ!』と暴動になる」


と感動していました。


そう、外国にでて思うのは、「日本以外ではたいてい、『自分の
利益最優先』である」ということです。


日本では違うのですね。


日本は、「アンパンマンの国」なのです。


やなせさんは、東日本大震災ででボロボロになった日本の未
来について、こう語っておられます。



<(質問)──未曾有の国難といわれています。日本は復興できる
のでしょうか


やなせ:(笑みを浮かべて)出来るのに決まってるじゃないか!あの
戦争だって日本は焼け野原になって、原爆をニ個も落とされて人が
何十年も住めないと言われたんだよ。

それがあそこまで復興できたんだから。

日本人は粘り強く、正しく立派に生きている人たちです。

間違いなく復興できますよ!>



やなせたかしさんは、日本を信じ、94歳で亡くなられました。


心からご冥福をお祈りいたします。


残された私たちは、世界のアンパンマンでいつづけましょう。