地政学の易不易(3/3)

┠──────────────────────────────────
┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp
┠──────────────────────────────────
├ 2013年10月17日 地政学の易不易(3/3)
┠──────────────────────────────────

おくやまです。

前回までに、1500年前後の二つの新しい航路、
つまり貿易ルートの誕生とその発展によって、
いわゆる「大航海時代」と呼ばれる
ヨーロッパ列強のシーパワーの時代がはじまった、
ということを説明しました。

この新しい貿易ルートですが、もちそんその発見当初は、
単なる「新しいルートの発見」ということだけで、
国際情勢的には何の変化も起こしておりません。

ところがスペインがカリブ諸島から中南米の富を持ち帰り、ポ
ルトガルがインド経由でアジアの富を持ち帰るようになると、
段々と国際的にも大きな変化が起こります。

なぜならルートが変わったことによって国際的な富の移動が起こり、
それがそれまでの国家のパワーバランスを変化させてしまうからです。

国が潤ってくると、人やカネがどんどん集まります。
そしてそこで産業や消費文化が花開き、
さらにそこに人が集まって・・・と富の蓄積の循環がはじまるわけです。

そうなると、富が集中している国には
必然的に権力も集中してくることになり、
それが国際的なパワーの分布状態に
大きな変化をもたらすことになるわけです。

これは最近の中国の例でもわかります。
海外からの富が集中してくると、必然的にその権力も集中してくるために、
国際的な発言力も高まってくるということですね。

これを別の言葉でいうと、
「新しい貿易ルートの変化によって地政学的な状況が変わった」
ということになります。

ようするに、国際政治における
「地理そのもの」は全く変化していないのに、
テクノロジーの変化のおかげで次第に「その意味が変わってくる」わけです。

この「意味」の変化、いいかえれば「地理観の変化」というのは、
国際政治においてもとんでもないインパクトを持つことになるわけです。

  • :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

さて、これを現在の国際的な状況に当てはめて考えてみた場合に、
どのような姿が見えてくるのでしょうか?

まずその前の前提として、現在の地政学的な状況は
どのようなものかというところから確認しましょう。

そのためにわれわれがまず考えなければいけない質問は、
「2013年現在は、地政学的にみるとどのような時代なのか?」
ということです。

地政学の祖であるマッキンダーは、
彼の生きていた1900年あたりから「ランドパワーの時代」が始まった
と主張しました。

ところが私の見解は少し違っておりまして、
まだランドパワーの時代は始まっておらず、実質的には
現在もまだ相変わらず「シーパワーの時代」が続いている、
と考えております。

理由はいくつかありますが、大きなものとしては、
いまだに世界の貿易で運搬される貨物の9割以上が
海上輸送に頼っており、
いわゆる「海の航行の自由」を担保しているのが、
実質的にはアメリカ(海軍)とその同盟国たちだからです。

このような前提や、前号までの話を踏まえて考えると、
今後大きな「地政学的変化」、
つまり「新しい貿易ルート」が生まれる可能性があるのは、
現在の国際経済の状況をベースにして考えると、
潜在的に2つ以上のキーワードが重要になるように思えます。

  • :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

まず1つ目は「北極海」です。

これについてはすでにロシアが活発な動きをしており、
2000年代後半に入ってから
ここの通商路(北西航路)の開発に最も力を入れております。

その一例は、冷戦時代に活用されていた北極海沿岸部の基地や拠点、
それに空港までが今年に入ってから続々と復活させられていること。

象徴的だったのは、2007年にロシアが潜水艦で北極海の海底に、
チタン製の旗(プラーク)を打ち込んで、国際的に「北極海はロシアのものだ」
と宣伝しはじめたことでしょうか。
そういえばプーチン現大統領も、
フィンランド沖で潜水艦に乗ってマッチョさをアピールしたことがありました。

さて、この航路が本格的に使われるようになると
国際的にどういうことが起こるか。

これは国際的な航路の変化につながることになりますし、
出発地点にもよりますが、北極海を通るルートだと
東アジアの国々がヨーロッパにマラッカやスエズを通るルートと比べて、
3割から4割の距離、そして日数的には10日ほど短縮できることになります。

もちろんロシアはここの支配のために
砕氷船のエスコートが必要だ」と主張しておりまして、
そこからのアガリを取る魂胆でありますが、
それを見越した中国は、ウクライナから購入した砕氷船
スコート無しの航行をすでに実現させております。

夏の間の短い期間しか使えないとはいえ、
これは地政学から考えればまさに「革命的」。

もし本当に本格的な使用がはじまれば、
16世紀のヴァスコ・ダ・ガマの航路開拓と同じようなインパクトがある
と言っても過言ではなくなるかもしれません。

  • :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

2つ目は「シェール革命」です。

シュール革命というのは、
これも2000年代後半からアメリカで本格化した、
新しい工法による、頁岩からのガスの産出法による
エネルギー革命だとされております。

地政学的に何よりも重要なのは、アメリカが「中東」ではなく、
自分の"縄張り"である「北米」において、
十分な量の石油やガスを産出することができるようになるという点です。
そうなると北極海の場合と同じようなメカニズムが働きます。

ルートの変更です。

日本にとっての現実的な具体例を考えてみると、
たとえば、危険なマラッカ海峡という「チョークポイント」を通過せずに、
アメリカ産のエネルギー資源を、太平洋を通じて
安全に輸入することができるようになります。

チョークポイントというのは、言葉を変えれば「関所」でありまして、
海でいえばこの代表格が、シンガポールの目の前にある「マラッカ海峡」や、
イランの前にあるホルムズ海峡
それに自衛隊が拠点を持って海賊に対処している「アフリカの角」の前の、
バブ・エル・マンデブ海峡」などです。

これが全体的に日本にとってどういう意味になるかというと、
少なくともエネルギーを運ぶタンカーなどの、
不安定な海域を通過する量を減らせることになります。

すると、これは同時に東南アジアやインド洋を通る航路の重要性の
相対的な低下にもつながるわけです。

また、3つ目のより小さな変化としては、
北米の中西部で出来たトウモロコシなどの輸出ルートが、
従来のミシシッピ川を下ってニューオーリンズ港からパナマ運河を通る
従来のものから、鉄道を使って太平洋沿岸へ運び、
それをシアトル近辺からアジアへ輸出するものに変わりつつある点です。

これは、アジアで家畜用の飼料の需要が伸びたことに
商機を見出した穀物メジャーたちが、アメリカ国内の運搬ルートを変え、
それがパナマ運河の重要性にも影響を与えているということです。

いずれにせよ、重要なのは、
貿易を行う(海上)ルートが、主に政治や産業、
そしてテクノロジーの変化によって劇的に変わるという点です。

これはまさに、

1、変化しない「地理」
2、変化する「地理観」
3、変化を起こす「テクノロジー」

というダイナミックな関係を思い起こさせるものであります。

何度もいいますが、スパイクマンは

「通信・交通のスピードや、産業界の技術の発展は、
 必然的に特定の国々のパワーポジションを変動させることになる。
 つまり地理的な事実は変化しないが、
 それらが対外政策に与える意味は変化するのだ」

と言っております。

地政学には「変化しない地理」もあれば、
テクノロジーによって「変化する地理観」があります。

そしてこの地政学的な状況の「ダイナミックさ」に気づける人だけが、
今後の世界や日本の流れというものに対応していけるのかもしれません。

( おくやま )

□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

戦略を理解する最短距離は「戦略の階層」を学ぶことです。
そこで、この戦略の階層を解説したCDを企画しました。

その中で、

・もっと多くの事例をもとに解説して欲しい。
・できるだけ血肉化したいのでワークやケースを紹介して欲しい。

というご意見を多く頂きました。

では、やはり奥山真司が「戦略の階層」をつくるきっかけとなった
師匠であるコリン・グレイの格言をもとに解説していこう。

これで国家戦略が学べます。

そして、「戦略の階層CD」を聞いて頂いた
多くのビジネスパーソンのために、
あのピーター・ドラッカーの格言を対比させることで、
事業や仕事や生き方についての哲学や戦略を、
より深く理解してもらおうという企画になりました。

今回のCDでは、「国家戦略VS経営戦略」という
大胆な対比を試みることによって
戦略そのもの、また「戦略の階層」をトータルに学ぶことができます。

現代の三大戦略思想家といわれる
コリン・グレイの著書「戦略の格言」(奥山真司訳)に対して、
「現代経営学」、「マネイジメント」の発案者である
ピーター・ドラッカーの格言をぶつけていきます。

▼▼▼「国家戦略とビジネス戦略を同時に学ぶ」▼▼▼
http://www.realist.jp/gvsd.html

□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

最近、日本のメディアで「地政学」という言葉をよく目にします。

この言葉の本当の意味は何なのでしょうか? 
そして、そもそも「地政学」とはどういうものなのでしょうか?

地政学」は一過性のブームなどには全く関係なく、
国家が国際社会の中で生き抜くためのツールとして、
日本以外の国々では
意識的/無意識的に活用され続けている学問です。

そして、昨今の日本周辺の混沌とした
国際関係の状況を冷静に分析する上で、
非常に役立つものなのです。

地政学とは、グローバル化した時代に、
国家が生き残っていくためのツールであり、
同時に国家の成功戦略のヒントとして
役立つものなのです。

しかし、日本では「地政学」は勉強できません。
地政学」を専攻できる大学はありません。

そこで、英国にて「地政学」を学んだ奥山真司が
"禁断の学問"地政学を復活させるつもりで、語り尽くします。

▼「奥山真司の地政学講座」
http://www.realist.jp/geopolitics.html

□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

(編集後記)

管理人です。

月刊日本』という雑誌の10月号に、
おくやまさんが寄稿されております。

その一部がウェブサイトで読めますので、ご紹介致します。

▼シリア軍事介入がもたらす中東大混乱  奥山真司 月刊日本
http://gekkan-nippon.com/?p=5612

この中で、ルトワック氏の見解として、

>>アメリカにとって望ましい結末は、勝負のつかない引き分けである。
>>アメリカはこれを達成するために、
>>アサド側が勝ちそうになれば反体制側に武器を渡し、
>>反体制側が勝ちそうになれば武器の供給を止めればよい。

とありまして、何ともリアリストらしいと言いますか、
身も蓋もない話で、とても、日本国内のメディアでは
出てこないような言説ですね。

また、上記URLでは読めませんが、
実際の紙面には、リアリストの大物:スティーブン・ウォルト教授
の見解なども紹介されておりますので、
本屋さんに行った折には、ぜひ、雑誌をお手にとってご確認下さい。

そして、ウォルト教授については・・・

▼スティーブン・ウォルトに学ぶ
日本が生き残るための国際政治学
http://www.realist.jp/walt-cd.html

が・・・ありますので・・・
こちらもぜひお聴き頂きたいな・・・と、管理人の切なる願いです。(笑)

( 管理人 )

□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

※このメルマガは転送自由です。(ただし出典を残して下さい)

▼『管理人Twitter
https://twitter.com/media_otb

▼「THE STANDARD JOURNAL 〜『アメリカ通信』」
http://ch.nicovideo.jp/strategy

▼FacebookPage:「THE STANDARD JOURNAL」
 https://www.facebook.com/realist.jp

★奥山真司への講演依頼・執筆依頼は、
【webmaster@realist.jp】までお問合せ下さい。

┠──────────────────────────────────
┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp
◎日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信
のバックナンバー・配信停止はこちら
http://archive.mag2.com/0000110606/index.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽こちらもいかが? "マナー・一般常識"ジャンルの注目メルマガ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
●サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
http://www.mag2.com/w/0000258149.html  平日刊

高卒、派遣社員という負け組から、外資系IT企業の部長になった男の、成功法
則を全て公開します。年収1000万円を超えるには、脳みそとこころの両方が進
化しなければなりません。そしてそんな進化は、人生すべての局面でプラスに
作用するのです。そんな進化とは何か?をお届けする、「まぐまぐ殿堂入りメ
ルマガ」です。
学歴やバックグラウンドに拘わらず、人生を思いのままに生きるために必要な
考え方が書かれた、「良書リスト」も希望者に差し上げています。

★発行者webもご覧ください↓
http://showon-sato.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【まぐまぐ!】━

┏┛ ̄ ̄┗┓
┣┳┳┏┻┃今なら!まぐポイント 【100億円】相当 プレゼント中!
┃┃┃┗┳┛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
┗┻┻┫┃ イマナラ!
…… ┃┃ 新規の有料メルマガ購読に使える【まぐポイント】を
…… ┃┃ 全ユーザ様にもれなく 【1000pt】 プレゼント!
…… ┗┛ 詳しくはURLへ!!
http://a.mag2.jp/FrB1


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【広告するなら、まぐまぐ!】━
大量に配信、確実な登録。メルマガ広告はクリック先のユーザー登録に強い!
30種類以上のメニューから、お客様に最適なプランをご提案いたします!
☆広告のお問い合わせはこちらから⇒ http://a.mag2.jp/iIks
☆低予算でご検討の方はこちらから⇒http://www.mag2.com/ad5/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━