ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その4)

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├ 2013年09月15日 ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その4)
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おくやまです。

前回のわたしのテキストからのつづきを書きます。
今回でいよいよ最後です。

ここまでの3回にわけて、
アメリカの対中作戦構想としての「エアシー・バトル」と、
その対抗的な議論としての「オフショア・コントロール」
をネタにして行われている、
戦略についての言論バトルの様子について書いてきました。

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ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その1)
http://archive.mag2.com/0000110606/20130823130108000.html
ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その2)
http://archive.mag2.com/0000110606/20130826124528000.html
ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その3)
http://archive.mag2.com/0000110606/20130829185740000.html

          • -

もう一度前回までの議論の流れを整理しますと、以下のようになります。

1,ハメスの「オフショア・コントロール」について
  国防省系のコルビーがいちゃもん。
2,それに反論する「オフショア」の父、ハメス。
3,その反論に、さらに反論するコルビー。

ということだったのですが、今回はこの議論の最後の打ち止めとなる、
ハメスの「再反論」を要約してまとめてみます。
タイトルとリンク先は以下の通りです。

「オフショア・コントロールvsエアシー・バトル、勝つのどちら?」
(Offshore Control vs. AirSea Battle: Who Wins?)

http://nationalinterest.org/commentary/offshore-control-vs-airsea-battle-who-wins-8920?page=show

このハメスの再反論なのですが、
開始早々から意外と厳しくはねつけるような内容でして、
コルビーの反論にたいする
ハメスの強烈なカウンターパンチから議論が始められております。

1,コルビーは「エアシー・バトルを積極的に議論すべきだ」
  という点で私が同意したと言ってる。
2,ところが俺は同意などしておらん!
3,なぜなら議論すべきなのはエアシー・バトルという「作戦コンセプト」ではなく、
4,対中「戦略」のほうだからだ!
5,何度もいうが、エアシー・バトルは単なる「作戦コンセプト」であり、
6,それがどのような「戦略」に属するのかハッキリしていないんだよ!

という風に、いきなり議論は戦闘モード。
そして次にコルビーの議論の分析に入りまして、

7,コルビーは「支配的な状態」を達成することまでは言っている。
8,でもそれをどのような「手段」を使って達成するのかは言ってないぜ。
9,つまり彼は「戦略」じゃなくて、単なる「望み」を書いてるだけだ!

と冷たく突き放します。
そして議論の対照の範囲を広げつつ、
「エアシー・バトル」の推奨者たち全員に対して

10,彼らはどのような「戦略」に従わせるのかなにも言ってない!
11,せいぜい言っているのは
  「敵が価値を置いているものをリスクにさらすこと」ぐらいだ。

といって、そもそも何を攻撃目標として狙うべきなのかを
ハッキリさせていないと指摘します。
そして、ここ最近の歴史の例でも
空軍力(エアパワー)の限界は証明されているとして、

12,湾岸戦争でもイスラエルを狙っていた
   スカッド・ミサイルを破壊できなかったし、
13,コソボ空爆(99年)だって
   ミロシェヴィッチを降参させるのに78日かかったぞ!

という証拠を、問答無用で突きつけるわけです。

また、
「それでもエアシー・バトルに採用される
 新しいテクノロジーで空爆の精度がさらに上がる」
という推進者たちの意見にたいしては、

14,そのようなテクノロジーはまだ秘密の部分が多いし、
15,それが「秘密」だからこそ、
  (日本を含む)同盟国たちが困惑してるんじゃないか。
16、つまり彼らにたいして、
  単純に「俺たちを信頼してくれ」と言っているだけじゃん

といって、エアシーバトルは
まるで鳩山元首相の「トラスト・ミー」発言と同じような不信感(笑)
を同盟国たちに与えている、というのです。

そしてここから「エアシー・バトル」と
ハメスの提唱する「オフショア・コントロール」を比較検討しつつ、

17,日本は南西諸島の方面に国防の焦点を移動させており、
18,これは中国のA2/ADを前提としたもので、
19,私の提唱する「オフショア・コントロール」にも合致させられる!

と日本の動きを評価します。さらに日本の政府高官側の発言として、

20,彼らは「エアシー・バトル」にたいして深刻な懸念を表明しているぞ!
21,中国本土爆撃への在日米軍基地の使用は、日本国民が許さないだろう
22,逆に「オフショア・コントロール」は日本の高官のウケがいい

と日本の例を引き合いに出しながら、
「エアシー・バトル」の不備についてチクチクとついていくわけです。

そして最後に、いざ紛争が起こったときのエスカレーションの問題について、

23,コルビーはアメリカ側の事情しか言ってない!
24,エアシーバトルは攻撃側に優位になるサイバー・宇宙空間に依存するものだから、
25,中国側としては「最初に攻撃したほうが有利になる」と勘違いしてしまいがち。
26,それにアメリカ側だって「最初に攻撃しよう」と思うだろう。

として、サイバーパワーやスペースパワーへの依存が
互いに「最初に動いて自分の状況を優位にしてやろう!」
と思わせてしまい、
それが戦争のエスカレーションにつながると指摘するのです。

最後の結論としてハメスは、

27,最も重要なのは、
   自国の利益を守るための「戦略」についての議論だ。
28,これにはアメリカの同盟国たちにも
   一緒にうまく対処してもらう必要がある。
29,そのためには平時・戦時の両方において、
   目的や手段についての議論が不可欠だ。

といって締めくくるわけです。

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いかがだったでしょうか?
私は個人的に、ハメスとコルビーの議論から見えてくるのは、

1,ハメスは、エアシーバトルの「秘密主義」にたいして不信感を抱いている
2,ハメスは、エアシーバトルをそもそも「戦略」だと思っていない
3,ハメスとコルビーは違う階層で考えている
(ハメス軍事戦略vsコルビー大戦略&作戦)
4,ハメスとコルビーの最大の相違点は
「中国本土への空爆」を実行するかしないか

の四点になります。
そして二人の考え方の違いの中心にあるのは、
究極的にはやはり「戦略の階層」という概念なのです。

しかもここでみなさんに注目していただきたいのは、
アメリカの、しかも政府・軍の高官レベルのプロ中のプロたちでも、
実は「戦略の階層」をそれほど正確にとらえられているわけではない
という点です。

もちろん彼らは実務の体験があるために、
何が「戦略」で、何が「作戦」なのかということは
なんとなく肌感覚で理解できているわけですが、
ハメスの言うように、そこまで正確に
頭でその階層の違いを区別できていない可能性が高いわけです。

おそらく可能性として一つあるのは、コルビーの議論からもわかるように、
もしかしたらエアシーバトルの案を作った軍人たちも、
階層を意識せずに、単に軍人として
「最近のテクノロジーを使えば軍事的にはこんなことできます」
と作戦レベルだけのプランを考えたということなのかもしれないのです。

そういう意味では、
「戦略の階層」の理解というのは
アメリカの軍事戦略レベルの議論においても決定的になる、
きわめて重要なものであるということです。

ただし今回のシリアについてのゴタゴタでもわかるように、
もしアメリカが中国といざ紛争状態になった場合に
決定的になるのはエアシーバトルやオフショア・コントロールではなく、
もっと上の「政策レベル」の議論なのであり、
その難しい判断が迫られるのは、結局のところは政治家だということです。

そしてアメリカの対中紛争が勃発した時に、
現在の日本の政治家たちは
どのように対処することができるのでしょうか・・・
この点については私はやや悲観的にならざるをえません。

( おくやま )

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