吉川英治「三国志」読了

久々に大作を読了した。

論語易経などを折に触れ開くことはあるのだが、長編を通読することはめっきり少なくなった。

ある程度の読書量が身についてくると、ノンフィクションであれフィクションであれ、だいたいが経験の内に消化され既視観を感じるようになってしまうからだ。最近の新刊で夢中になったのは、「永遠の0」「海賊と呼ばれた男」くらいなものだろう。あと、10年以上の昔だが「ワイルドソウル」の印象が非常に強い。

さて今回、三国志を手に取ったのは書店でたまたまというのが縁であった。三国志はNHKの人形劇でファンになって以来、何回も読んできたしゲームで天下統一したこともあったりで、繰り返し親しんできた。

北方謙三・陳瞬臣・柴田錬三郎などの三国志も読んだことがあった。

しかし、やっぱり吉川英治三国志はよかった。語り口調は昭和の戦時中だから、相当古い感じはするのだが通底に流れる道徳観が、偽悪でもなく偽善でもなく中庸で心地よい。

40歳を過ぎての読後感で、自分自身も驚いているのであるが、陳宮にすごく魅了された。曹操の命を救った男だが、後に袂を分かち呂布と最期を共にする。男だね。

三国志は俗化孫子なんて言う人もいるらしいけど、私には失敗例の宝庫であるように思われた。就中、孔明の北伐が不成功に終わる終盤においては、結句、国家の繁栄は人材数量に依るのだなと思わされた。いまの日本やいかに。そして、天の意思というのか、神通に達したような奇略もその時に当たっていなければ成功しないということ。

春秋変われど、歴史は普遍なのだと思い至ること数知らずであった。

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)