ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その2)

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┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp
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├ 2013年08月29日 ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その3)
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おくやまです。

またまた前回からのメルマガのつづきを書きます。

ここ2回にわけて、アメリカの対中作戦としての
「エアシー・バトル」に対する「オフショア・コントロール」という
新しく提案された戦略をめぐって展開されている
言論バトルの様子について書いてきましたが、今回もこの続きを。

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ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その1)
http://archive.mag2.com/0000110606/20130823130108000.html
ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その2)
http://archive.mag2.com/0000110606/20130826124528000.html

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まず最初にハメスの「オフショア・コントロール」について、
国防省人脈に属するコルビーがいちゃもんをつけて始まった
今回のナショナル・インタレスト誌上の論争ですが、
前回でこのコルビーにたいするハメスの反論を紹介したところで終了しました。

そして基本的に浮かび上がってきた論点とは、
いちゃもんをつけてきたコルビーは
「戦略の階層」を意識していないんではないか、というものです。

では自分が行ったツッコミに対して
ハメスから反撃を食らってしまったコルビーは、
そこからどのように再ツッコミを行って反論したのでしょうか?

それが今回ご紹介する、「中国との戦争についての闘い」
(The War over War with China)
http://nationalinterest.org/commentary/the-war-over-war-china-8896?page=show

というコルビーの記事です。いつものようにさっそく要点を書き出してみましょう。

  • :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

1,ハメスさんと私の意見の違いはかなりある。
2,でも互いに同意できるのは、エアシー・バトルについてもっと議論すべきという点。
3,ハメスさんの反論の核心は、私が新しい「戦略」を提案していないというもの。
4,彼の対中「戦略」はいくつかの判断基準で不合格ですが、私のは全部合格です!
5,たしかに「戦略」ではないことは認めますが、ペンタゴンだって提案してません。

とここまで書いて、彼は「戦略」ではないことを半分認めてしまってます。

何が戦略かは議論が長くなるのでやめる、でも実は大きな枠組の中で
アメリカは「戦略」として以下のようなことを行っている、

という解釈に移るわけです。

ではその「戦略」とは?

6,1945年以降に東アジアで一貫した戦略をアメリカはもってます。
7,それは西太平洋の海と空で圧倒的な軍事力を維持して、
8,同盟国と地域の安定を守ること、なんです。
9,このロジックはロバート・ギルピン(Robert Gilpin)の「覇権安定論」です。

と、いきなり議論を飛ばしてきます。
ここで「アメ通」をお読みの方に鋭く気づいていただきたいのは、

★^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
コルビーはハメスのいうような「(軍事)戦略」ではなくて、
そのさらに一つ上の「大戦略」の話に議論をすり替えてきた
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

という点です。

つまり、彼は「私の議論には確かに戦略は提案してませんが、
エアシー・バトルはその上の大戦略のレベルとは
一致しているので問題ありません」と言っているわけです。

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コルビー側の反論をつづけましょう。

10,この(大)戦略はエアシー・バトルにもマッチします。
11,でもハメスさんの(軍事)戦略はこの(大)戦略にはマッチしません。
12,これだと西太平洋の秩序が崩れてしまいますし、
13,日本みたいな同盟国たちも態度を変えちゃう。

ということで、

★^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
互いに考えている「戦略の階層」が違うということが浮き彫りに。
つまり「軍事戦略」を考えているハメスと、
「作戦/大戦略」の二つのレベルで考えているのがコルビーと。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

13,とにかく私が主張したいのは、ハメスさんの戦略は効かないってこと。
14,だって本土を攻撃しないと言えば、中国にとってかなり有利になるわけです。
15,ハメスさんの「終戦を考えてない」という批判にも反論できます。
16,私は中国の「政権交換」や領土の奪還はダメだという立場です。
17,よって中国との戦争は制限だらけになるのは間違いないです。
17,戦争を終わらせるという意味では私のほうがはるかに有利です。

と、ここまではやや弱い議論を展開。
コルビーはどうも「本土攻撃を避けて相手にダメージ与えなかったら、
相手を講和交渉に引き込めないでしょ」という点をプッシュします。

ところがここでコルビーは
突然ハメスの議論を認めるような内容のことを書き始めます。

18、ハメスさんが言っていることの中で、正しいポイントが一つある。
19,それは対中作戦をエアシー・バトルだけに特化しちゃダメということ。
20,オプションは複数用意すべきで、これには本土攻撃をしないものも必要。
21,もちろん用意できる選択肢の数には予算の関係から制限あり。
22,他にも彼が正しいのは先制攻撃の危険を指摘した点。
23,この点についてエアシー・バトルには問題ある。
24,しかしエアシー・バトルでは先制攻撃するとは言ってない。
25,ハメスは心配しすぎでしょう

と、彼の主張のいくつかの正しさを認めつつも、
エアシー・バトルの優秀さをさりげなくアピールするやり方を採用しております。

そして最後は通常兵器(非核兵器)における紛争のエスカレーションの話題に移り、

26,ハメスさんは私が通常兵器のエスカレーションに鈍感だと言ってますが、
27,私はこれを単に維持したいと言っているだけです。
28,だって戦いがエスカレートした時に、兵力で優位を維持したいでしょ?
29,優位を維持できれば中国だってエスカレートさせたいと思わないです。

と反論しつつも、またハメス側の議論を認めて、

30,いや、実際私も中国との戦争がどうなるかなんてわかりません。
31,しかしそれを恐れて議論をしないというのはさらにマズイこと。
32,ハメスさんと私は他にも一致する点があります。
33,それは自分たちの戦略が実践で使われることを避けたいという点です。

といって締めております。

いかがでしょうか?ここまでのやりとでハッキリしたのは、

1,ハメスが「戦略じゃない!」として「オフショア・コントロール」を提案。
2,コルビーが「それじゃ効かない!」と批判。
3,ハメスが「それも戦略じゃねぇぞ!」と反論。
4,コルビーが「いや、大戦略には合致してますよ!」と反論←いまここ。

ということです。

これに対してハメスはどう答えるのか・・・・
これも長くなったので次回にまたご紹介します。

( おくやま )

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編集後記

管理人です。

今回も「エアシーバトル」の熱い議論が紹介されておりましたが、
やはり、「戦略の階層」の概念を理解していると、
このような議論の"勘所"が掴めるように思います。

▼▼ 「戦略の階層」を徹底解説するCD ▼▼
http://www.realist.jp/strata.html

この議論の行方は、次回のおくやまさんの号で、
まとめを含めて締めて頂けると思います。

さて、今回の編集後記も、例の如く、
管理人がWEB上で気になった記事をご紹介致します。

▼【オピニオン】失敗に終わった米国の中東大戦略 - WSJ.com
http://goo.gl/f2OBzq

今まさにシリア情勢が緊迫しておりますが、
事ここに至った事情が過不足なく、良くまとまっていると感じました。

正直申しまして、管理人は中東問題はよくわからず、
「中東情勢は複雑怪奇…」のような捨て台詞を残して、
内閣辞職でもしたいくらい、よくわからないのですが(笑)、
そんな管理人も、なるほどそういう事情もあるのか・・・
と納得出来る内容の記事でした。

もっとも、WSJと言えば、オーナーが・・・ですので、
その辺りは、いつも、おくやまさんから
「プロパガンダ」についてのお話をたくさん伺っておりますので、
管理人もよくよく用心して、記事を読むようにしております。

かなりの長文記事になりますが、
お時間あるときにでも、お読みになって頂ければ、と思います。

( 管理人 )

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最近、日本のメディアで「地政学」という言葉をよく目にします。

この言葉の本当の意味は何なのでしょうか? 
そして、そもそも「地政学」とはどういうものなのでしょうか?

地政学」は一過性のブームなどには全く関係なく、
国家が国際社会の中で生き抜くためのツールとして、
日本以外の国々では
意識的/無意識的に活用され続けている学問です。

そして、昨今の日本周辺の混沌とした
国際関係の状況を冷静に分析する上で、
非常に役立つものなのです。

地政学とは、グローバル化した時代に、
国家が生き残っていくためのツールであり、
同時に国家の成功戦略のヒントとして
役立つものなのです。

しかし、日本では「地政学」は勉強できません。
地政学」を専攻できる大学はありません。

そこで、英国にて「地政学」を学んだ奥山真司が
"禁断の学問"地政学を復活させるつもりで、語り尽くします。

▼「奥山真司の地政学講座」
http://www.realist.jp/geopolitics.html

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