ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その2)

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├ 2013年08月24日 ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論(その2)
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おくやまです。

前回のメルマガで紹介した話のつづきを書きます。

エアシーバトルという対中作戦概念(?)が米国防省周辺で盛り上がり、
それにたいして「そんなもの戦略じゃねえ!」と文句をつけて、
その代替案というか補足の戦略として
「オフショア・コントロール」というものを提案したのが、
海兵隊の大佐のトーマス・ハメス。

そして彼の意見に対して、
最近になって論争をふっかけたのがコルビーである、
というのが前回までの話でした。

ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論
  http://goo.gl/emvtgl

さて、そのコルビーの「オフショア・コントロール」への批判にたいして、ハメスは、

「残念だがエアシー・バトルは戦略じゃない」
(Sorry, but AirSea Battle is No Strategy)
http://nationalinterest.org/commentary/sorry-airsea-battle-no-strategy-8846?page=show
という論文で反論することになります。

こういう風に堂々と議論を闘わせられる文化
というのはうらやましいですね。
日本でこんなことしたら、
議論した人同士の間で、変な恨みを残すことになりますので・・・

ではハメス自身の反論はどのようなものだったのでしょうか。
これもポイントごとにわかりやすく要約してみましょう。
ちょっと長くなりますが、分割してみますのでお付き合いください。

  • :-:-:-:-:-:-:-:--:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

1,コルビーが俺の「オフショア・コントロール」を批判したな。ディベート上等!
2,しかし問題はエアシーが「戦略」じゃない点だ。公式には単なる「作戦概念」。
3,いくら良い「作戦概念」でも、戦略がなけりゃ災害を引き起こすだけ。
4,戦略は別の戦略とでなければ比較は無理。だから俺は「オフショア」を提案した。
5,だから俺はエアシー・バトルを元にした別の戦略が出てくること望むぜ。
6,オフショア・コントロールは対中「戦略」であり、「勝利」を目指ちゃいないよ。
7,コルビーの議論には、戦略に重要な「手段」や「目的」のバランスの話がないね。

と理論的な話をしてから、具体的にオフショア・コントロールの利点についての細かい話に移ります。

8,俺の戦略では、第一列島線内の海域の中国の行動を自由を奪うことが狙いだ。
9,抑止には「拒否」と「懲罰」が必要だ。拒否は第一列島線内の海域の交通遮断。
10,懲罰は、この海域交通の遮断により、空で優位に立つことであり、
11,これによって中国経済にダメージを与える。
12,ロシアは陸路で助ける?鉄道の規格が違うし、そもそも陸路はコストかかりすぎ。
13,空と海で優位だから、第一列島線の外の海域でも多国の船を阻止できるぜ。
14,中国に「花」を持たせて「相手に教訓を与えた」と言わせるのが大事だ。

そしてここから比較検討に入ります。

15,俺の戦略は同盟国にもほとんど負担をかけない。堂々と公開の場で議論もOK.
16,また、既存の軍備だけでできるから金もエアシーほどかからない。
17,エアシー・バトルはネットワーク化した軍で闘うらしいが、これは逆に脆弱だな。
18,衛星狙われたら終わりだし、エアシーはエスカレートするって言ってる奴もいる。
19、ところが俺の戦略は中国の早期警戒システムなんかを攻撃しないから穏便だ。
20,それに「エアシー」は秘密が多くてイカンね。日本人もそれに気をもんでいたよ。
21,エアシーは中国内部に侵入するから逆に好みの場所で戦えなくなるぜ。
22,そもそもあれだけオープンだったイラクコソボでだって空爆で苦労したんだぜ。
23,また、コルビーはエスカレートさせずに精密爆撃できると言うけどそりゃ無理だ。

ということで、エアシーのアグレッシブさを批判します。そして結びの言葉として、

24,平和のために戦争の準備しろというのはいいが、その準備には金がかかるんだ。
25,戦略は準備可能な価格のものじゃなきゃダメだぜ。
26,財政が厳しい中で、高価な手段は使えないよ。
27,ドイツみたいな作戦概念だけじゃ失敗するよ。
28,他の人たちも別の「戦略」を提案してくれよ。

と主張しております。

ここでわれわれが気をつけなければならないのは、
彼が「作戦概念」(Operational Concept)であるエアシーバトルと、
軍事戦略(Military Strategy)であるオフショア・コントロールを混同するな、
と強調している点です。

これはつまり「戦略の階層」の問題そのものであり、この階層の違いを認識せよ、
というのがハメスの基本的なポジションです。

すでにみなさんご存知のように、戦略の階層とは、

1技術<2戦術<3作戦<4軍事戦略<5大戦略<6政策<7世界観

となるわけですから、ハメスからすれば
「俺は4の話をしているのに、その論敵であるコルビーは3とか2の話しかしていない!」
というのが不満なわけですね。

  • :-:-:-:-:-:-:-:--:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

ということでまとめます。

ハメスの反論の論点は、主に以下の三点を強調していると言えるでしょう。

1,エアシー・バトルは「戦略」(軍事戦略)じゃない!階層を間違えるな!
2,エアシー・バトルは脆弱だし、エスカレートする!俺のはエスカレートしない!
3,エアシー・バトルの準備には金がかかる!俺のは金かからない!

戦略論を学んだ人間としては、一番気になるのは
やはり1の階層の間違いについての指摘でしょうか。
これはハメス自身もかなりしっかりとして説明しているのにたいして、
コルビーはどうもこの辺について鈍感なような気が。

だからこそハメスは自分の戦略のポイントを
もう一度クドイくらいに反論の中で説明したのかもしれません。

もちろんハメスの提唱している戦略でも、
いざ本当に戦争が起こったら、
実際はそこまで中国側の行動を「コントロール」できるのか・・・・
この点についてはハメスでさえ
もかなり楽観的な見込みをしているとは思いますが。

さて、これに対してコルビー側がどのように反論をしたのでしょうか?

興味深いところですが、次のメルマガをお待ちください。

※前回のメルマガで訂正箇所があります。
ハメスに文句をつけてきたコルビーの肩書は「元CIA分析官」ではなくて、
「海軍分析センター」(CNA)の分析官でした。訂正します。

(おくやま)

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