変化は多様な体験に基づく

1. 論長論短 No.197

変化は多様な体験に基づく
宋 文洲

変化の激しい現代ですが、多くの経営者は部下に変化を促します。しかし、
変化しろと言われてもなかなか変化できないものです。それは虫を怖がる子供に
「怖がるな」と叱るようなもので、言われればできることではありません。

カナダとの国境の近くで2ヶ月のサマースクールを終えた子供を迎えに行きました。
その晩、近くの旅館に久しぶりに家族で泊まりましたが、男の子供が上半身を裸で
寝るのです。この子は元々必ずパジャマで寝ていたのに、その変化ぶりにびっくりです。

よく聞いたら一緒に寝泊まりしたお友達にそんな人が多かったそうです。
もともと私はよく子供に裸で寝るメリットを言っていましたが、その時は全然
聞いてくれなかったのに友達のやり方を黙ってみて子供が変化してしまいました。

多様性という言葉は誰でも語るのですが、実際に多様性の無い人間同士で
多様性を実現することは不可能です。これは男に子供を産んでもらうようなもので
努力とテクニックでできることではないのです。

多様性に欠けている先生達や親達が教育について多様性を語ることは殆ど
男がお産を語るようなものです。そう言いながら、実際に多様性のある言動に
出会うと「ルールを守らない」とか「秩序を乱す」とか「空気を読めない」
とかに表現を変えてしまいます。実際に彼らにとって多様性は絵に描いた餅で
本当の多様性という餅の味を知らないからです。

変化と多様性は実に緊密に関係しているのです。我々人間は変化する際、
ある暗黙があります。それはAを止めてBやCになることです。BやCなどを
見たことのない人、あるいは触れたことのない人にAを止めなさいといっても、
言われた人はそれが恐怖にしか聞こえないはずです。

たとえば転職への恐怖。一般的には、現代の日本のサラリーマンの転職への
恐怖は半端なものではありません。これが経営者や子供達にも伝染して異なる
組織や環境に飛び込むことへの抵抗に変わっていきます。するといつも同じ
上司部下、同じ顧客やパートナーと付き合うことになります。気心が知れて
安心する面はありますが、嫌なことがあってもそこから逃げ出す発想が持てず、
そのままやる気と才能を腐らせてしまうのです。

逃げ出すのが怖いからです。逃げ出しても異なる組織や環境を知らない、
つまりAからBに変わる時の体験が圧倒的にたりないため、逃げ出せないでいる
のです。私は定期的に子供達が通う学校を異なるタイプの学校、異なる言語を
使う学校に変えています。狙っているのは優秀な教育でもなければ、優れた
仲間でもありません。目的は異なることを体で体験することです。

中国人と日本人がそんなに違うか。それは両方の国で生活し、教育を受けない限り
それほど分かりません。できることならば第三国、アメリカの学校で世界中の
子供の中から日本人や中国人を観察してみるともっと分かりやすいと思います。

帰路に子供達にサマースクールの日本人と中国人の違いを聞くと、「両方とも
僕達は話せるからよく分からない。それよりもいろいろな国の友達がいるから
比べる暇がない」との答えが返ってきました。

そうなんです。僅かな違いを虫眼鏡で見ること自体が多様性に慣れていない証拠です。
もっと広い視野で大きな多様性を体験すれば小さな相違に拘れなくなるはずです。
これと同様に、もっと大きな変化を成し遂げたいならば、もっと大きく異なる
世界を体験しないといけません。

70、80歳になっても経営を主導する日本の経営者をみて理解できない時も
ありましたが、最近、彼らのように戦前、戦後、安保闘争などの多様な教育と
社会環境を経験した日本人はもう珍しいと思って納得しているところです。

大きな声で部下や社員に「変化しろ」と叫ぶ経営者の多くは自分が変化しません。
変化できない人はいつもと変わらず「変化しろ」と叫ぶばかりです。まあ、
たまに「チェンジ」と変わるのですが・・・。

(終わり)

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