「安全感」を与えられない上司

1.論長論短 No.193

「安全感」を与えられない上司
宋 文洲

コンサルティング業をやっていると、経営者からの相談は多岐にわたって面白いですが、時には若い人からの相談もあります。特に多いのは上司との関係の相談です。時には部下の誤解やわがままがありますが、私と相談する若者はそれなりの能力と実績を持つ人が多く上司に問題があるケースが多いのです。

しかもその上司の問題はマネジメントの在り方などの難しい問題ではなく上司やリーダーの基本にかかわるケースが多いのです。

先日こんな相談がありました。A事業部とB事業部は会社の中で業績を競い合う部署です。A事業部の有能な若手社員の上司である課長がB事業部に転籍することになりました。「お前も来いよ」と課長に言われた若手社員が事業部長のことを考え、その誘いを拒否しました。

不快になった課長はこの若手社員にあれこれ嫌がらせした上、人事評価について思い切り悪い点数を付けました。

アンフェアだと思った若手社員がA事業部にこの事態を報告しましたが、
A事業部長は何もしません。なぜならば、彼はもう退職の直前なのでこれから出世するB事業部長とトラブルを起こしたくないからです。

実はA事業部長は私の古い知人です。人当たりが良いのですが、確かにリスクのあることはしません。特に争い事になると必ず態度を曖昧にするのです。

彼のような性格だと本来、リーダーになるべきではないですが、大きな組織になればこういうリーダーはむしろいいのです。よくいえば調整型管理職ですが、悪く言えば古い社員がそのまま管理職になったようなものです。

彼らはリーダーの最も基本である「部下に安全感を与える」ことさえできないのです。皆さん誤解しないでほしいのですが、起業していた私は決して組織内の縄張り争いは好きではありません。しかし、リーダーである以上、少なくとも自分の部下がアンフェアな扱いを受けた場合、リスクがあっても責任を持ってそれを正す義務があります。そんなことができないリーダーは間違いなく部下のミスや不正も正すことができず、部下育成もできないからです。

数年前、私の友人が未成年買春罪で牢屋に入りました。牢屋から出てきた時、もう元の職場からクビにされましたし、新たな就職もできません。仕方なく自分の会社を作るのですが、銀行も犯罪歴を理由に当座を開設してくれません。私は奥さんにサポートをお願いしながら、彼にかわって会社を作ってあげました。

何のメリットもありません。その後、彼の我がままを叱ったため、たぶん今、彼にも感謝されていません。しかし、私は彼にしてあげたことについて何の後悔もありません。むしろほっとします。人間としてやるべきことをやったからです。

リーダーとなる人間の器は大小あるものの、必要最低限の性格が必要です。いざという時は自分の安否と関係なく部下を守るのです。当然ミスや罪を庇うのではなく、自ら進んでミスや罪を認めさせ、早く償うことを勧めるのも守る方法です。しかし、アンフェアな扱いを受けた場合、手段を尽くして主張してあげないといけません。

今朝ニュースをみていたら、石原慎太郎さんが橋下さんの慰安婦発言について「大迷惑」、「謝れ」、「終わったね、この人」と批判したと分かりました。あの時、相談に来た橋下さんに「その通りだ」と激励したのは自分でなく別人のようです。

リーダーの性格を持つならば、逆にすべきです。あの時は勇気をもって
「やめろ」と言って、今になって「頑張れ」というべきです。

周囲の人々の安全も守れない人達が国のリーダーになれることに不安を覚えながらも、石原さんに感謝します。少なくともここ数日悩んで来たメルマガの内容は彼のお陰で決まって一時間ほどで今回の宋メールを書きあげることができました。

(終わり)

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筆者の蛇足

右翼的な私が宋さんのメルマガを愛読しているのは、宋さんがためにする反日主義者とは思えないからです。

日本の立場は非常に悪く、我が国にとっての敵性国家は中国・韓国・北朝鮮であり、パワーバランス如何によって態度を変える可能性がある国が、アメリカやロシアであると思っています。

宋さんの指摘が重要なのは、彼の眼に映る日本人の特性が、いかに国際的に不利な状況に結びつくかを教えてくれるからです。日本人は中国人のいうことなんかとか、朝鮮人の言ってることをなんて、一括りにしてしまい端から話に耳を傾けない傾向が強いことです。

今日のこの話からうかがえることは、石原慎太郎なんて信用するに足る人物じゃないということがよく分かるのです。橋下さんがしくじったこととは別問題で、信頼するに足る人間とはいかなるものかということを、よく教えてくれた話ではないでしょうか。

そして、日本には日和見のどうしようもない人間が、要領よく出世する現実があり社会の閉塞感の根源になっていることを気づかせてくれますね。

国難に際しても一枚岩になれないのは、自分可愛さで卑怯な振る舞いをする人間が、占める割合があまりにも大きいからなのです。