北京で訪朝した飯島勲さんと話した

1.論長論短 No.191

北京で訪朝した飯島勲さんと話した
宋 文洲

運命なのかどうかはわかりませんが、日本の重要な話題に私はいつも気付かな
いうちに近付いてしまいます。数ヶ月前、隕石ジョークで尖閣論争に自ら飛び
込んでしまいましたが、数日前、飯島さん訪朝の話題にまた近付いてしまいました。

あの朝、私が北京空港の国際線入口に入ろうとすると、大勢のマスコミが集ま
り、カメラを構えていることに気付きました。「著名な芸能人か」と思って軽
い気持ちでカメラ達の方向を眺めるとびっくり。なんと北朝鮮を出たばかりの、
あの飯島勲さんが歩いてきたのです。

本能に駆使され、手に持っていた携帯で記者達に囲まれた彼の顔を撮った後、
急いで国際線に入りました。その直後に、飯島さんは大勢の外務省職員に囲ま
れながら、入口に入ってきました。搭乗券が必要なので記者達は全員、外にシ
ャットアウトされました。
http://krs.bz/softbrain/c?c=2993&m=88346&v=05817975
(宋が撮影した飯島さんの写真)

「飯島さん、宋文洲です。私のことをご存知ですか。」ほっとした飯島さんに
向かって私は呼びかけました。飯島さんはびっくりせず、「ああ、そういえば
よく見た顔と思いました。テレビによく出ていますね。」と答えて下さいました。

「明日はフジテレビの『新報道2001』に出ますが・・・。」と私が言うと、飯
島さんが慌てて「何も言いませんよ。」と私の話に割り込みました。「いいえ、
飯島さんの訪朝の話ではなく、経済の話ですよ。猪瀬さんが東京都に特区を設
けたり、深夜バスを走らせたりする東京活性化の話です。」私は彼を安心させ
たかったのです。

そう言っているうちに私達は空港内の電車ホームに降りるため長いエスカレー
ターに乗り、同じ階段に並んで立ちました。前も後ろも随従の外務省職員でい
っぱいなので動きがとれません。

この時ですが、飯島さんは突然言い出しました。「六カ国協議を崩すようなこ
とはありません。」

あまりにも突然でしかも前後関係がないので私のほうがびっくりして黙ってし
まいました。今思えば「何も言いませんとおっしゃったのに、なぜわざとこの
ことを言うのでしょうか?」と聞けばよかったですが、お疲れのところ、気遣
いして沈黙を保ちました。

「どうですか。向こうの方々は。皆人間同士ですから、優しかったですか?」
彼の気分を楽にさせるために、私から沈黙を打破しました。

飯島さんが気楽に付き合ってくれる話題と思いしましたが、むしろますます表
情が硬くなりました。

不味いと思って私はまた話題を変えました。「安倍さんご夫婦のご馳走になっ
たことがあります。総理に会う時、ぜひよろしくお伝えください。」これを聞
いた飯島さんはやっと気楽な表情で「分かった。分かった。」と応じてくれました。

こんな話をしているうち、私と飯島さんと10人ほどの外務省職員の方々は空港
内の無人電車に乗りました。飯島さんや皆さんに向かって「東アジアは数カ国
しかないのでトラブルがあっても、いずれ仲良くするしかありません。皆さん
もぜひ頑張ってください。」と言った後、私は飯島さんと離れて別の席に座り
ました。

電車が走り出した後、随従の職員の方に飯島さんとの記念写真を頼んだら、優
しく断られました。「それはそうだよね。」と思いながら、軽かった自分を恥
じ入りました。

電車が止まると、私は皆さんと一緒に出国カウンターに向かいました。随従の
外務省職員達があっという間に外交通路から出国したのに、飯島さんは私と並
んで民間人のカウンターで出国手続きをしていました。

野次馬根性で写真を撮りましたが、今度は空港職員に呼び止められ、彼の目の
前で自分の手で削除せざるを得ませんでした。出国カウンターの前は撮影禁止
とのことです。「さすが中国は閉鎖的だ。」と思いましたが、友人から「普通
は出国のところは撮影禁止だよ。」と言われました。

飯島さんは結局私と同じ8:45発のCA181に乗って羽田に飛びました。お疲れだ
と思って出国カウンター以降、一切お邪魔しませんでした。

「六カ国協議を崩すようなことがありませんよ。」という言葉だけがずっと私
の耳に残りました。極秘のはずの訪朝が北朝鮮によって公開されてしまったこ
とは、ピョンヤン空港から分かったはずです。

いわば飯島さんは裏切られた気持ちを呑み込んでの四日間訪朝なのです。盗聴
が当たり前の環境の中で自分の判断でスケジュールを最後までこなしましたが、
北朝鮮のドラマに強引に出演させられたようなものです。

北京に着いてやっと世界の反応や外務省の意見を知った飯島さんですが、「何
も言いません。」と言いながらも、ぜひ伝えたい言葉は、あの「六カ国協議を
崩すようなことはありませんよ。」でした。少なくともあの時点での彼の思い
において、一番緊迫性を要するメッセージだったでしょう。

(終わり)

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