「安倍叩き」に見る中国の外交的敗北感(2/4)

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■ 「安倍叩き」に見る中国の外交的敗北感(2/4)
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▼訪米も「大失敗」?

実は、安倍外交に対する中国メディアの根拠なき酷評は
今度の訪ロで始まったわけではない。今年2月、
安倍首相が就任してから初訪米した時、
中国国内の主要メディアは口を揃えて「安倍がオバマ大統領に冷遇された」と報じて、
安倍首相の訪米を「屈辱の大失敗」と論評していた。

もちろん、安倍首相が訪米で「冷遇」されたような事実はどこにもない。
そして後述するように、安倍首相とオバマ大統領との首脳会談では、
日本のTPP交渉参加に関して日本側の要求を取り入れた形で
合意に達したことは周知の事実である。

それでも中国の国内メディアはやはり、このような重要事実を完全に無視して、
とにもかくにも安倍首相の対米外交が
「失敗」であると決めつけて嘲笑しようとするのだ。
安倍訪ロに対する論評の場合と同様、安倍政権を貶めようとする
中国の官制メディアの執念深さは、
もはや病的な異常さの域に達しているように見える。

▼敗北感を隠せない中国

問題は、中国の官制メディアがそれほど病的な異常さを持って
安倍首相の外交を扱き下ろすのは一体なぜなのか、であるが、
その謎はむしろ、「対中国」の意味合いも含めての安倍外交の大いなる成功と、
その裏返しとしての中国外交の大いなる敗北感にあるのではないかと思う。

去年12月に安倍政権が成立してから、首相とその閣僚たちは明らかに、
「中国包囲網」の構築を意図する周辺国外交を精力的に開始した。
去年の12月28日には、安倍首相はロシアのプーチン大統領と約20分電話会談し、
北方領土問題の解決に向け平和条約締結への作業を活発化させることで一致した。
さらにオーストラリアやインド、インドネシアベトナムなどの
各国首脳とも電話会談し、アジア周辺国との連携を深めた。

そして今年の1月12日、岸田文雄外相が豪州を訪問して
安保協力の拡大を含めた戦略的パートな関係を強めた。
1月16日から、安倍首相はベトナム、タイ、インドネシアの3カ国を歴訪し、
「自由と民主主義、基本的人権、法の支配といった
普遍的価値を同じくする国々と関係を強化していく」との理念において、
安全保障分野での連携も含めた諸国との関係強化に努めた。

その一連の周辺国外交の総仕上げとして、
今年の2月に安倍首相就任後初めての訪米を果たした。
そして前述のように、オバマ大統領との首脳会談では、
「関税撤廃の例外を認めるべき」という日本側の主張が受け入れられた形で、
日米両国が日本のTPP交渉参加に関する合意に達した。
その結果、安倍政権は懸案事項の
TPP交渉参加に踏み切ったのは周知の通りである。

そして、世界第三の経済大国日本が交渉参加に踏み切ったことによって、
TPP交渉が実現に向けて大きく前進した。ある意味では、
日本が正式に交渉参加を表明した時点で、
いわば「環太平洋戦略的経済連携協定」の大勢がすでに決まったと言ってよい。
歴史はこれで大きく動いたのである。

この動きはもちろん、関係諸国の対中外交、
あるいはアジア太平洋地域における中国の位置づけに
極めて大きな影響を与えようとしている。
TPP参加予定の11カ国には中国が入っていない。
というよりもむしろ、TPPは最初から中国をかやの外において始まったものである。
そして、日本を始めとする多くの関係国がこの「戦略的経済連携協定」に入ると、
それはまさに、中国を囲むアジア太平洋地域において
中国を抜きにしての一大経済圏が出来上がったことを意味するのである。
この「中国抜き大経済圏」の出現は当然、
いわゆる「大中華経済圏」の膨張を周辺から封じ込めておく
という深遠なる戦略的意義があるのである。

そういう意味では、少なくとも中国側の視点からすれば、
環太平洋戦略的経済連携協定」が出来つつあることは、
まさに中国にとっての外交戦略上の敗北であり、
アジア太平洋地域における中国の影響力の低減を意味する
地政学的大変動であろう。

・・・次回につづく

( 石 平 )