グローバルは「主流になる」ことではない

1.論長論短 No.190

グローバルは「主流になる」ことではない
宋 文洲

日本企業が海外に出ていったほうがいいのは事実ですが、海外の売上を柱にしようとするのは間違っていると思います。

基本的に、グローバルは日本の事業をよりよくするための補助手段です。キヤノンのように約8割が海外での売上になることがあるかもしれませんが、それは多くの外国での売上が足された結果であり、どこかの特定国の市場を狙った結果ではありません。

グローバルビジネスはそれぞれの国における謙虚姿勢が一番大切であり、外での売上が国内市場の売上の足しにするくらいのスタンスでいるのが健全です。

マーケットが大きいからといって海外に期待しすぎるのは危険です。ましてや「どこかの国で主流になってやろう」などと考えるのは思い上がりとすらいえない幼稚な発想です。

決して、日本人にはそんなことはできないというわけではありません。外国に行ってその国で主流になるというのは、それほど大変なことなのです。こういうことには、自覚を持つ必要があります。

毛細血管までその国のことを感じ取れる人聞にならないと、主流になるのは無理です。その国の国籍を取り、その国でずっと生活をして、できればその国の女性と結婚をして、その国に骨を埋めるつもりじゃないと、その国の主流になれるはずがありません。そうなったとしても、主流になれるのはだいたい2代目、3代目からです。

現地に行って、そこに定住する。人脈を築く。アメリカで主流になりたかったら、アメリカ人になることです。味噌汁よりはハンバーガーがおいしいという人間にならないと、主流になるのは無理です。下手な英語をしゃべっていてもダメです。

中国に行って主流になりたいなら、まず中華料理を食べることです。「こんなくどいやつ、食べてられるか」と思ったら無理です。ギトギトの中国人になる必要があります。

ソフトバンク孫正義さんは、在日三世です。日本に生まれて、日本で育って、普通の日本人とほとんど変わるところがありません。その孫さんでも、1990年に日本国籍を取らず、韓国籍のままだったらソフトバンクはここまで発展していないと思います。別に悪い意味ではなく、主流をめざすならそうすべきだと思います。それくらい、主流になるというのは大変なことなのです。

孫さんはアメリカの通信キャリアを買おうとしたのですが、間違いなく日本のビジネスを補助するためのものであって、アメリカで主流になることをこれっぽっちも考えていないはずです。

私は、日本で主流になれません。その自覚はあります。別に日本が悪いわけではなく私が悪いわけでもなく、そういうものです。そして、それでいいと思っています。

海外に出ても、その国の主流をめざす必要はありません。また、めざしても意味はありません。企業にとって本質的な目的は主流になることではなく、売上を上げて国内の売上の足しにすることです。

主流かどうかを気にするのは、男性が自分の「サイズ」にこだわるようなものです。ブライドにかかわるかどうか知りませんが、「だから何?」という話です。

もう世界のあちこちで小さく儲かって、リスク分散になっていて、合わせてみるとキヤノンのように売上の8割だったり日東電工のように7割が海外になっています。これがグローバル化の理想です。

主流になるどころか、その国で儲かっていることは誰も知らないほうがいいくらいです。目立つと、他の会社が潰しに来る可能性があります。何か問題が起こったとき、やり玉に挙げられるかもしれません。

国内の足しになる利益が上がればいいのだから、度外れた野望はもたないことです。

(私の新書「英語だけできる残念な人々」からの抜粋)
http://krs.bz/softbrain/c?c=2965&m=88346&v=e3b04349

(終わり)

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